須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

悲しきストーブ

 日中最高気温5℃。ややあたたか。

 夜8時頃、ストーブの調子がおかしくなり、燃焼中に寂しく消える。

 これはマンション備え付き、すなわち大家所有のFF式灯油ストーブ。ここへ移転した翌年の1999年春に新品と交換されたモノなのであるが、それからわずか三年目の2002年初冬には具合が悪くなり、頻繁に消えるようになって、ついには5分と燃焼が続かなくなり、暖房器具としての役割を何も果たさなくなったのだった。できるだけ大家に会わないように、大家の関心をひかないようにして暮らしている自分は、管理人にも相談できずに大変に往生したのであるが、以前事務所代わりの木造モルタルアパートで使用していた移動式灯油ストーブ(これも一応FF式である)を押入れから引っ張り出して、どうにか数日をしのいでいるうちに、折しも、「オーナー様のご依頼により、全戸ストーブの部品取替え点検と並びに清掃をいたしますので、そこんとこヨロシク」という主旨のチラシがストーブ販売会社から回って来て、インコ二羽を含む我ら家族全員が無事に冬を乗り越えることができたのである。居間のストーブの周りに不可抗力的に置かれた書棚や机、鳥籠を載せたダンボールなどが密集しており、それがためにストーブのフロント面から吐き出される暖風が充分に行き渡らないというか、ストーブ前の極めて限定された一帯だけで旋回して温度が上昇するがためのサーモスタット装置への悪影響、それと本のホコリや小鳥たちの羽毛などが、長期間に渡り空気の吸い込み口に与える悪影響という我が家の特殊事情が要因での故障と推察し、これは尚更、大家には相談できないと決め込んでいたのであるが、他にも何戸か不調を訴える家があったようで、つまり二年半前のその時は、来るべきストーブ点検の時期が来ていたわけである。
 今回のこの変調もまたそういう時期の到来であればよいのであるが、とりあえず掃除機持ち出し、背面中心にストーブ周りをきれいにし、再びスイッチ入る。発火、燃焼。燃えろ、燃えろ、燃え続けろ、世界の終わりまで、と切に祈りながら眺めていると、そのまま燃え続ける様子なので、一安心。大家を通さずに修理に来てもらえば、おそらく数千円の修理代では済むまい。そんな金はこの家にはないのである。

 A本屋さん委託本へ注文来る。「ワトソン夫人とホームズの華麗な冒険」。
 各社保険パンフレットを流し読み、寝る。