須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

悲しき面接

 ストーブ、今のところ、とりあえず作動中。
 二年前に発行せし自家カタログに注文五点、うち昭和2、30年代の「文藝」「短歌研究」など四点在庫、計5千円。「さっぽろの古本屋」第2号の当店出品に注文をくれし新規客への梱包品に同封せし「すがや通信」28号からのもの。ただし先に送りし本代ならびに送料3,840円の入金いまだに確認できぬ故、さらに重ねて送ること能わず。こないだのと一緒にまとめて払うから、とかなんとか言われて追加でホイホイ送ったはいいが、何度催促しようがいっこうに音沙汰なし、そのまんま貰い損ねて後味の悪い思いをした覚えもあるのであるからして。

 3時過ぎ、数日ぶりに外出、外気にふれる。何か世界が新鮮で、歩くのも楽しく感ず。郵便局で金をおろし、付近にある<パッケージ・プラザ>なる文具包装用品専門店、<H>なるホームセンター(って、昔の金物屋大きくして、文房具屋や家電屋、その他を合体させたわけね、つまり)を廻り、仕切書、ビニール袋、紐、クラフトテープなどの梱包用品を買う。

 この、以前は<●●ホーマー>なる社名であった<H>の西岡店、ふた月に一度ほどの割合で利用し、重宝しておるのであるが、ちょっとばかし苦い記憶もある。家から歩いて10分ぐらいの所に位置しておるのだが、4年前の2月に棚卸しのアルバイト3時間をやり2千円をもらったことがある。

 問題は、さらにその数日前、店内の貼り紙を見て、長期アルバイトに応募し、面接を受けた時のこと。手元のマニュアルを見ながら店長は、志望の動機の他に、この<H>の印象、とか、この店をどのようにしていったら良いとあなたは考えるか、なんて項目のその質問の有効性にいささかの疑念も挟まずに質問してきた。ごく近所で通勤至便、自分でも出来るんじゃねえべかという気持ちと、目先の金欲しさで応募して来ているに決まってるじゃねえか、たかだかバイト志望に、都会の現代っぽい会社ぶって(って誤解してるんだろうな、たぶん)、そんなこと訊くんじゃねえよ、バッカじゃねえの、と辟易。なおかつ、自分より十歳は年下であろうその店長が、履歴書を見て言うことにゃ、「ずいぶん、あちこち転々としてるね」ときた。自分は29歳で古本屋を開くまでは古本屋の店員を丸4年間やり、その前は有線放送の営業マンと電気工事会社のテコ(手元=助手)を経験しているだけ、つまり全部合わせても四つ、職種にすれば三種に過ぎない。これの何処が転々なんだ、テンテンなのはおめえの頭だろーが、と若禿げの進行しつつある店長の頭部を眺めながら、内的独白をしていたものである。数日後に郵送されてきた通知はもちろん不採用。まあ、店長さんにしても自分より年上の、どことなくインテリっぽい(誰だい?吹き出してんのは)使いにくそうな野郎よりも、可愛らしい女子大生のバイトを一人でも多く置いておく方がよかんべからなぁ。

 ただ、この<H>のよろしかりしただ一点は履歴書も同封して返送してきたところ。おかげで、写真を剥がしてもう一回使えるぞ、と何かちょっと得をしたような気分になり、実際、その直後に受けた面接に再使用して助かったという、情けない思い出があるのである。
 一旦帰宅。6時過ぎ、平岸まで歩き、映画専門店<R平岸>さんの店へ顔を出し、さらに地下鉄平岸駅近辺のビルへ行き、某金融機関へ金を払う。これは再来年春までには山本寛斎の予定、ようやく先が見えてきた所ジョージである。
 帰りRさんの店に立ち寄り、古本関係の話ほかの雑談。彼女は古本界では後輩であるが、ネット販売では大先輩なり、教示を受く。自店HP、Eシークもさることながら、最近はヤフー・オークションに一等力を入れているらしい。以前はよく飲んだものであるが(というよりも、飲ましてもらっていたのだ、情けなくも恥ずかしくも、年下の女性の同業後輩に)、ずっとこの何年間かは酒席を共にする機会もなくなっていた。聞くところによると、この丸一年以上、一滴も酒は飲んでいない由。元来がそう飲む方ではなかったし、酒を旨いと感じていたのではなかろうから、それはそれで結構なことである。

 つい最近、Rさんの怒りを買った客の話を聞く。「一昨日にEシークの方に◯◯(地名)の人から注文があって、商品は◎◎県の別の人へ送ってくれとあったので、請求書はどちらの宛先にすればいいのかなと思って、一応メールで訊いてみたんですよ。そしたら、折り返し『俺に決まってる!当たり前だ!!』ってメールが来て。何だ、こいつは、と思って、メールアドレスよく見たら、あ!これは、スガさんや薫風さんがよく話してくれた人物じゃないかって」。うーん。あの人ならやりかねんと思う。

 買い物済まし、9時前帰宅。ストーブは大丈夫。のようだ。

 枕元の電球が切れる。