須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

金曜 またも新年会、またも失敗

 午後3時起床。15時現在、雨、6・0℃(最低2・9、最高7・6)、湿度82%。うどん、ナットウ、冷水、牛乳、カフェオレ。雨、風、冬の嵐の感あり。

 道内の同業者よりメール。「ふと気付くと私も開業から20余年たってしまいました。お互いこの商売でなんとか首を括りもせず生きているのは感慨深いものです。◯◯◯・◎◎書店・●●●●●etc.様々な事情により『足を洗』った先人が頭をよぎります。偶に札幌のセリに出ても顔も名前も分からない人が多くなりました。」。しばし自分も感慨に耽りまたもしみじみ。しかしまだまだクタバルわけにはいかぬのだ、お互いに。

 5時15分出。風はやみ雨は小降りに。長靴履いて傘さして駅へ。MS近くの道路は雪が融けて水溜まりがあちこちに。地下鉄でススキノ駅、5時40分前着。ほどなく、なちぐろ堂大西夫妻も。

 連れ立って南5西4ニュー美松ビル4階<酒房びって>へ。鍋の用意がされている小上がりに座って待つこと数分、T畑さんが来られる。昨年の道新文学賞残念会を兼ねてT畑さんが新年会を開いて下さったのだ。生ビールで乾杯して燗酒を延々。鮟鱇鍋、牡蠣、ツブ刺身、魚介フライ(中身の名前失念)、ポトテサラダ、ワラビ煮染め、ワケギなどの山菜類、出されるものどれも美味。それにこじんまりとした店内に若者の姿なく実に落ち着ける店なり。たいそう自分にフィットする。メニュー見逃し価格体系は分からないが、何れ自分でも再訪したいと思う店なり。

 「スガさんはいつから詩を書いてたんですか?」と大西君が訊くので栄高以来の敗北の自分史をかいつまんで語ってみる。何かの拍子に古本屋営業年数の話となり「某某さんなんかも組合入って来た時は随分腰低かったんだよぉ〜、すぐに高くなっちゃたけどさぁ、金の力ってスゴいもんだなぁって思ったもんよ、◎◎◎書房や◯◯書店より須雅屋の方が開店したのも組合加入も2年、3年先なんだよ、△△書房とか◇◇書店なんて、オレの、7年、10年後だぜ、自慢にならんけどさ」と云うと、ちょっと意外という表情の後に大西君、「そうだったんですか、その割にはなんか組合での地位が低いですよね」と正鵠を射ているのであるが、聞き辛いことをハッキリと指摘する。ば、ば、ばかたれ、心の王者を目指しているんだ、オレは、たまには地球という一遊星のことも思い出してやろうよ、って境地をよぉ、なぁんて云ってやろうかと思ったのであるが、陸の王者はともかく金の亡者にはならぬとも限らぬ、いや一度はなってみたいと思わぬでもないので、抗議はやめておく。

 二、三時間してT畑さんの函館中部高時代の新聞部仲間の二人来られて、高校時代の話や読書の話で大いに盛り上がる。お一方は以前二度お会して飲んでいる(もちろん御馳走になったのだが)Yさん、もうお一方は女性(お名前失念)。T畑さん、今読み進めているという岩波文庫戦争と平和』新訳を鞄から出して「所々に顔を出すこの訳者コメントが面白くてな」と云われる。自分が羨ましいのはこういう人であるのを改めて確認。最後、鮟鱇鍋のスープにご飯を入れてオジヤに。感動。涙。すっかりこの店のファンになる。

 二次会は移転して第◯桂和ビル地下に入ったスナック<i:z>へ(http://d.hatena.ne.jp/nekomatagi/20080704)。ウィスキー水割り。長靴履いた姿のまま歌いまくる。零時前、モップス朝まで待てない」やタイガース「スマイル・フォー・ミー」を聞けるとは思わなかったわと云われた女性は帰られる。1時半頃か、Yさんも、またね、と帰られる。おそらく、カーナビーツを歌っている時、調子に乗って例の「おまえのすべてを〜」の部分で大西夫人を何度も繰り返し指さしたのが不味かったのだろう、寡黙な大西君がなおさら無口になり沈んで行くのが分かった。1、2曲しか歌わず、ずっと酒を飲んでいたのでその分酔ったのかもしれないが、スガさんの「さん」が取れ、目つきが険しくなる。ああ、愚かであった。この馬鹿な先輩を赦してくれ。今度からは「好きさ好きさ好きさ、おまえのすべてを〜」でキミを指さすことにするからさぁ。

 大西夫妻を見送り、T畑さんにタクシーで送られ午前2時半頃帰宅。いつもとは違って楽しさの中に若干の侘しさ。応援してくれる人がいるうちに少しでもましな結果を出さなければと思う。ダイコン炒り煮と温奴でウィスキー水割り三杯、玄米茶。午前6時就寝。