須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

日曜 稀本出現2

 午後3時半起床。15時現在、晴、2・2℃(最高気温3・2℃)、湿度63%。うどん、ナットウ、冷水、トースト2、ミニ餡パン1、牛乳、カフェオレ、紅茶。

4時、ラジオで「ハゲタカ」3、4。受注1、E・ウォートン「エイジ・オブ・イノセンス新潮文庫。10時「ETV特集熊井啓・戦後日本の闇に挑む」。

書庫へ分け入り、福永全小説を探す。本をエッサ、ホイサと移動して書庫の中へ入るのがとても面倒に思え、怠慢こいて知人の蔵書を利用しようとI君にメールしていたのだが、出張中なのか返事がないので、謎の解決に光明を見いだすべく自ら探索に向かったのでる。第2巻『塔・草の花』を取り出して居間に戻り月報を見、付録の「『草の花』遠望」(決定版後記)を読み返す。件の月報執筆者は串田孫一ではなく一高で一年後輩の矢内原伊作だった。巻末に「初出と書誌」の頁があり、何気なく眺めていると、<「草の花」私家版、昭和四十七年四月刊。限定一〇部、番号入。>の文字群が目に飛び込んで来た。3秒ほど見つめていただろうか、ありゃ?と思った。もしかすると金曜日に送られてきたFAXの記述にあった17年は47年の誤植、入力間違いなのではないのか。そうすればすべての謎が解ける、もっとも理にかなう。だが、だとすれば、自分は、私は、この俺は、オノレの勝手な思い込みで、ありもしない稀覯本の初出現を想像し、オノレは参戦も見学もせず、それどころか東京の市場にも出向いていないというのに、札幌の片隅にある陋屋で、クリスマス市での入札戦のドラマを夢想し、従来の福永書誌の訂正を要求する新発見にこの数日独りコーフンしていたというのは、うふっ、これは何たる滑稽、なんたるアンポンタンのおバカさん、ということになってしまうのではないか。東京の同業◯◯氏へメール。「先週金曜のクリスマス市の目録外出品として当日FAX が送付されてきましたが、その中に福永武彦『草の花』昭和17年10部限定私家版というのが一番始めに掲載されていたのですが、これは昭和47年の間違いでしょうか?」と。

入浴。牡蠣とブロッコリのマヨ焼、牡蠣豆腐、ダイコンのメカブかけ、燗酒二合、ほうじ茶。有馬記念は9番人気のマツリダゴッホが優勝!なんというネーミングであることか。マチスでもピカソでもだめ、これはやっぱりゴッホでないと。実況のNHKアナウンサーもマツリダゴッホが勝つ大波乱劇に、思わずゴールした瞬間、「祭りだ、祭りだ、マツリダゴッホ!あっと驚きました!」と叫んだ由。有馬記念史上最高の払戻金だそうな。書見。午前9時就寝。