須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

金曜 稀本出現1

 午後4時起床。15時現在、晴、−2・1℃(−0・2℃)、湿度48%。トースト1、炙りロールパン2、牛乳、カフェオレ、紅茶、冷水。

 東京組合からファクシミリ。本日クリスマス市の目録外出品の中に「福永武彦『草の花』限定10部 昭和17年」とありコーフン。これは超A級の稀覯本であろう。知識、経験とも貧しいので断言はできないが市場に出現するのは初めてではないのか。『福永武彦全小説』の月報に串田孫一?だか誰かが、「かにかくに」という「草の花」(昭和29刊)原型となる小説を福永さんが一高時代の校内雑誌に書いていた、との回想を寄稿していたのを読んだ記憶があり、とすると、今回の昭和17年私家版はそれを纏めるなり、改作して、召集前に(〈昭和17年12月に、招集の通知受けるも、盲腸炎手術後のため即日帰郷〉と後述年譜に記載)記念というか遺書として一本にし、ごく親しい人だけに配ったものなのだろうか、そうか、戦後ではなくこの時点で「草の花」というタイトルに変更、決定されていたのか、と推測したりしたのだが、講談社文庫『夜の三部作』(昭和46初版)収録の源高根編年譜を覗いてみると昭和25年の記述に〈この年の前半に寝たまま中篇「慰霊歌」を書き、破棄する。後の「草の花ー第一の手帳」の原型。〉とあるので、またタイトルを「慰霊歌」に直したのだろうか、と混乱してくる。

 落札価はとんでもない数字だろうな。射止めたのは◎◎堂か、××書林か、◎●書店か、◯◯書林か、△■書店か、それとも**書房か、はたまた@@書店かも。いずれにしろ今日のクリスマス市はこの本を一目見るだけにでも上京する価値ありだ。ウチのようにヒコーキ旅賃が捻出できない店でなければの話であるが。福永ファンの知人I君に『全小説』の「草の花」の巻月報の内容を教えて頂戴とメール。

 梱包6。「プレミアム10/加山雄三70歳の若大将」。星由里子は出たが期待した田中邦衛は出演せずで残念。政府は南極海の調査捕鯨で予定していたザトウクジラの捕獲を1〜2年間中止すると発表。零時半〜2時入浴。味付け義経ジンギスカン、温奴、ダイコン浅漬け、ワカメみそ汁、米飯、ほうじ茶。書見。断酒。7時半就寝。