須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

金曜 <Rプラザ>初日

 8時20分起床。6時現在、雨、17・8℃、最高気温23℃の予想。うどん、ナットウ、冷水、食パン1、ミニ白あんパン1、カフェオレ。

 10時、狸小路<Rプラザ>着。ちょうど開店したところ。萌黄さんご夫婦、A本屋さん来ている。中古レコードの<ページワン>のアルバイト女性佐藤さんに挨拶。自分の定席たるレジコーナーの中に座って何かやっている男がいる。よく見ると<半畳古本市>に出店の一軒Zさんがえびな書店目録や何処か東京のデパート展目録を繰りながら、昨日並べた自店本に値段を書き込んだプライスシールを付け、その上にビニールを被せてパックしている。その作業がなかなか終わらず居座り続けるので、自分、ずうっと立ちっぱなしで疲れる。並べた本を見てみると、なかなかの強気の値段。ま、他店がどんな価格をつけようと自由なのであって、兎や角云うべきではないのであるが、こういう素人あるいはセミプロが本にプロ並の値段を付けていると(現在のネット上ではそれがスッカリ当り前になってしまったけれど)、ケッ、というか、つまりあまり可愛くないのである。出品のほとんどが美術本なのだが、昭和47年発行の中原中也の限定版全詩集なんていう本もあってこれが2万円!。ん〜ん・・・。新編集の全集も出て、全詩歌集が文庫で出ている現在、この値段では難しいんでないかしらん。Z氏、11時半ぐらいまでいて帰る。
 いつも来られる名は知らぬが顔馴染みのお客さん多し。◯◯◯書房、ご夫婦で来店。それから眼鏡に帽子の小柄な学生さんらしき若い女性。手にした本を時おりレジ台に持って来て積み上げて、ここから最後に選びますからと宣言。選ぶのはいいが、結局買わなかった本5、6冊はそのままカウンターの上に放ったらかしで、こちらの仕事が増える。本を持って来るその度に、そして清算の最中に、こちらが訊いてもいないのに、探していたブローティガンの文庫が見つかったとか、フランス文学とかラテンアメリカとか好きなんですよとか、薫風書林が一番お気に入りの古本屋さんとか、ご自分の紹介をしてくれる。将来古本屋さんをやりたいそうで、「古本カフェなんかどうかしら?」と夢を語る。極度に無愛想なのも困るけれど、こんなに話し好きでは店を持っても店頭では仕事にならず、古本屋にはあんまり向いていないのではと感ず。おまけに紙袋の半分ぐらいの本をこの<Rプラザ>のある同じ中央区から来ているのにお持ち帰りにならず、発送を希望される。忙しいのにこちらの仕事がまた増える。発送代金が市内315円。こんなに安すぎるのが良くない、と自分は思うのだ。あんまり親し気に向こうが話しかけてくるので、<ページワン>のバイト佐藤さんはてっきり自分の知人か、古本屋関係の人かと思ったそうで、「いや、今日初めて見た人」と訂正すると驚いていた。が、この女性が真駒内石山堂さんの台からこれも実は、まんず売れんだろうな、と踏んでいた「石原吉郎詩集」2千円なんて買うのだから世の中分からない。でもあの詩集、あまり見かけないので珍しいのは珍しい。

 1時から社内食堂で昼食休憩。妻手製オニギリ2ヶを食堂のお茶と水でいただく。座ったまま15分ほど仮眠。2時、北海道新聞の取材が入る。合わせて再度来店した萌黄さん、偶然居合わせた真駒内石山堂のお一人杉村さんが応対。セカンズさん、早くも補充十数箱持って来る。みんな、やる気バリバリ。夕方、<焼鳥じゃんぼ>の三宅さんも来店。「見るとつい買っちゃうね」と数冊買われる。

 須雅屋ブースにはメインの商品として拙作掲載の『彷書月刊』の04年11月号を20部並べてあって、その説明の自家製ポップを妻に書いてもらったのであるが、その字が上手だと、萌黄夫人と佐藤さんから褒められる。キレイなんですよ、字だけは、と答えておく。開店翌年から20年間で30冊余り出した須雅屋カタログの半分は彼女の手書きによる目録。『翻訳文献2号:仏蘭西文学』などは内容はともかく3000点120頁もあって腱鞘炎にならないのが不思議なぐらいのシロモノであった。ところで一冊も売れないで終わるのでは怖れていたこの定価販売600円の『彷書月刊』が二冊も売れ、しかも一冊は自分の目の前で見本用においてあるモノをじっくり眺めて中年の女性が買われたので感激する。『札幌人』も数冊出て安堵。最終日までにはけっこう売れるかも。

 5時半夕方休憩。妻オニギリ1と持参の水。7時台、A本屋さん整理と補充に来、バイト代5000円戴く。8時近く、萌黄さんと杉村さんがまたまた出現。杉村さんは打ち上げの宴会の日取りを心配していたりして、いやあ、そういうノリって自分の嗜好にマッチしているので嬉しくなる。

 売上、全体としては前回4月末の三分の二であったが、半畳古本市は自分の予想よりも好成績だった(ただしZさんのみ一点も売れず。やっぱりな〜、と思う)。と云っても、平台6台分12店で谷中の一箱古本市の最高売上者ぐらいの数字だけれど。明日の朝刊に記事が載る由なので、明日明後日以後はどっとお客が押し寄せるかもしれない。ここだけの話であるが、あんまり忙しくなってもアルバイトとしては困るところもあるのだが・・・。
 帰り、萌黄さんに南平岸駅までクルマに乗せて戴く。<Maxvalu>で米ホシノユメ5キロ、酪農牛乳、モヤシ2、トイレロール、それに地下鉄代240円が浮いたのを祝して酒「温情」2リットル・パックも買ってしまう。計2918円。

 8時半過ぎ帰宅。入浴。ハンバーグ、蒸しモヤシ、厚揚げ焼き、カンビール1、日本酒1合半、ビーフカレーにて第四食。「私の名盤」デーモン小暮最終回はELP。パーマーではなくコージー・パウエルがメンバーだった時のレコード。日ハム45年ぶりの11連勝。3時過ぎ就寝。