須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

仮眠夫婦

 30分ほどうとうと。後は眠れず、妻が北大へ義母の薬を取りに外出した音を聞く。9時半起床して洗顔着替え、お客さんを待つ。

 10時少し前、お客さんSさん来店。井伏鱒二も買って下さる。計5400円。奇麗な封筒に入ったお金ととても立派なリンゴを二ヶを戴き恐縮する。すべて玄関先での応対、ものの一分もかからず帰って行かれた。居間で座って袋から札を取り出して驚く。ビール券が二枚入っていた。な、なんということだ。世の中にはこんなこともあるのか。生きていて良かった。思わず涙......というまでには至らなかったが、とりあえずお礼のメール出す。
 メールに記してあったHPアドレスから今しがたのお客さんSさんのブログ日記に飛んだ。読書家で文章も上手いのにちょっと驚く。こういう主婦の方が市井にひっそりと生活していらしゃるのだな、油断はできぬ、と市井の古本屋は思った。が、なにより魂消たのは趣味のひとつであるらしいパチンコでしょっちゅう勝っていることである。恐るべきテクニック。そちら方面には暗い自分であるが、それはそれは驚異的な勝率を維持しているように思われるのだ。ン万はもちろん、時には二桁稼いだりしているようなのである。カ、カ、カネというのはこんなにいとも容易く稼げるものなのか、と思わず自分はパチプロへの転向を考えた。が、Sさんもこの地位に登り詰めるまでには、「蜂の穴」に入門したが如きキビシい修練の日々とそれ相応の投資があったにちがいない。と、思いたい、売れない古本屋の自分としては。それとも生まれもっての才能なのか、彼女は天才パチンコ・アーチストなのであろうか。やはり自分も弟子入り入門して人生を変えるべきか、気持が揺れ出しているのを感じる。が、自分がやっても駄目なのは目に見えている。朝早くから主婦の仕事もきっちりとこなしているからこそ、運もつくというものだろう。それに自分には古本ギャンブルがある。この十年ほどはさんざん負けてはきたが、そろそろいい目が出ないとも限らない。なーんて、まだ性懲りもなく考えているから駄目なのだ。十年に一度ぐらい「当たって」みたところで、所詮「こつこつ」には敵わないのだから。ねえ、そうでしょ、今は転職した◯◯書店さん!

 12時現在、晴(時々雪ちらちら)、4・0℃、北北西の風5m/s、湿度60%。

 トースト二枚、豆パン二ヶ、カフェ・オ・レ、紅茶、冷水にて第一食。さあ、仕事、とも思ったのであるが、眠気ひどく、横になろうとしていたところへ妻帰宅。さあ、寝ようと寝室に入ろうとしたところへH新聞社のKという未知のお人から電話。「昨日、選考会議が開かれまして」と切り出すので、何事ならん、「北の古本屋あんたが大将で賞」の第一回受賞が決まり賞金百万円でも貰えるのか、と思わず胸高鳴るのを覚えたが、用件は月一でごく短いコラムの依頼。金になることは犯罪以外何でもやらねばと、「はい、はい」と二つ返事で引き受ける。と、電話中にチャイムなり宅配便。唐沢景子さんから恒例の酒類他がどーんと届く。カンビール、焼酎、日本酒とゴージャス。ぐふふふ。。やったぁ!なんという素晴らしい日であることか。ははは。朝に続いて、また酒が来ちゃったよ。ふぉーほほほほっ。一挙に酒の備蓄が豊富になってしまった。何か、スゴく豊になった気分の須雅屋でございます。こんな自分を見捨てず命の水を送ってくれる女神に感謝。即お礼メール。

 4時、仮眠のつもりで横になる。妻も押入に横になる。8時に目覚まし合わせる。7時に起きてみせるぞ、自力で。と決意して寝たのであるが、午後10時半起床。睡眠時間の狂いがさらに激しくなる。

 ◯◯◯◯さんよりメールあり。今日来た◯◯調査の情報。上司と若手の部下のコンビでやって来た由。「会計のほうの資料は昨年分もまともに揃ってなかったのですが、 別に何をとがめられることもなく、ある資料だけ持ち帰ってチェックするとのこと。 それよりも、現在の古本屋の状況、仕入れルート、販売ルート、 背取りや古書組合の交換会のことなど こと細かく聞いてきて、こまめにメモしてました。 これから、ネット業者関係の◯◯調査に入るうえでの 情報収集といった感じでした。 来る前には、ウチのホームページはもちろん、 ヤフーオークション楽天フリマもしっかりチェックしてきてました。 」だそうだ。これからネット古本屋への根こそぎ、ローラー作戦が始まるのかもしれない。恐ろしや。ってウチに来られても座る場所もないんだけれど。

 1時から、ラジオでMJQ、渡辺貞夫聴きながら、一昨日の詩らしきものをまたいじる。次いで古本仕事、エクセル作業。3時、守屋浩の歌が流れる中、マグロ刺身、カジカとトウフ汁、目玉焼、米飯、チョコレートモナカ、暖麦茶にて第二食。「有り難や節」、久しぶりに聴いたが傑作なり。4時から「こころの時代」。難波利三のインタビュー。志賀高原だかのホテルにカンヅメにされて「てんのじ村」の書き出し五十数枚書いたエピソードには笑った。難波が角部屋で、隣の部屋に陣取った編集者に三泊四日のあいだ監視され続け、、大浴場の風呂に入る時も付いて来られたそうな。編集者も必死だったのだ。日記付け、ネット徘徊などで時間また空しく過ぎ、午後1時半就寝。酒類豊富なれど断酒。