須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

水曜 帯広古本市搬入往復行

 午前6時10分起床。うどん、ナットウ、冷水、トースト1、クリームチーズ、ロールケーキ、牛乳、カフェオレ、紅茶にて第一食。室内作業用の靴など準備。第一書庫のヒーター切って7時20分出発。地下鉄で札幌駅。

 8時2分発のスーパーとかち1号乗車。自由席空いており上手く座れる。寝ようとするも、床下から響いて来る機械の音大きくて一睡も出来ず。目を閉じたり開けたりしながら、結局ぼーっと窓外の雪景色眺めながら水ばかり飲む。夕張を過ぎたあたりの川面には氷が張っており、札幌の寒さとは質が違うのを実感。10時41分帯広着。

 ホームで田原さん、角口さん、開札を出てセカンズさんの諸氏と合流し藤丸デパートまで歩く。やはり寒いわ。寒気の針が顔に刺さってくる感じ。十数年ぶりの帯広であるが、JR駅の近所は見廻すところホテルばかりで、すっかり観光都市という感じ。

 藤丸の社員通用口から入り、7階の催事会場に入ると、根室の道草さんと榧さん、帯広の春陽堂さん、それに亜本屋さんが陳列中。少し遅れて旭川の旭文堂さんと元古本共和国の緑風さんも到着、陳列を始める。四半世紀前、八文字屋さんの丁稚時代にやはり古本市の搬入搬出でこのデパートに来たことがあるのだが、今回は想像していたよりずっと広い売場面積。100坪以上はありそう。<帯広藤丸古書の街>と銘打ってサッポロ堂さんや春陽堂さんと懇意の十勝書房、八王子佐藤書房など東京の店も荷物を送って来ており、道内外の15店が参加の大古本市だとか。

 自分にとってラッキーなことに、伊藤運送のトラックに乗って夜間移動した亜本屋さんと伊藤運送社長によって亜本屋さん分の荷物はすでに会場に上げられ、分野別の区分けもされて各平台の前に置かれていた。後は本をダンボール箱から出して並べるだけ。百円均一と3百円均一に取りかかるが、平台が一般の物に比べて大きいのでなかなか埋まらない。亜本屋さんは美術本と、その他の単行本。

 正午から30分ほど社員食堂で昼食休憩。同席の皆さんが社員食堂のメニューを美味しいと評価しながら食べる中(亜本屋さんはロースカツ定食、セカンズさんは醤油ラーメン、角口さんと緑風さんは帯広名物豚丼)、みそ汁50円(亜本屋さん出費)と持参オニギリ3ヶと番茶と冷水で済ます。食堂も明るく開放的で快適であり、メニューも多く値段も好感が持てる。観察するばかりで実際に食うわけではないのだが。

 うろ覚えの記憶では、福永武彦の詩集『ある青春』(昭和23年7月 北海文学社)はたしか藤丸百貨店の息子さん(当時の専務?おそらくは後に社長)の協力で発行された筈で、それだけでもたいそう文化的、日本文学史に名を残すに値する商業施設であると思うのだ。

 食後、ただちに陳列再開。例により仕事の早い亜本屋さんが頑張って、自分がやろうと予定していた掘り出し物コーナーと児童書も並べてしまったので、4時完了となる。バイト賃5千円頂く。若干の出張手当を期待していたので、ちょっと、ゆらっ、としたが、雇主も大変そうなので仕様がない。他店の台をちらっと見学。東京の店と同じく品物だけ参加の薫風書林の本も1台半並んでいる。量は少ないが良質な人文関係で売れそうだ。自分が会場をふらふら漫歩している間に、今回の古本市のために急遽設営された喫茶コーナーのテーブルで頬杖ついて亜本屋さんは、くーくー船を漕いでいた。ご家族のことなど、諸事諸々で疲れているようだ。

 5時、まだ皆さんが陳列中の藤丸を後にし、斜め向かいの<六花亭>本店でマルセイ・バタサンド5ヶ入り580円購入。札幌でもいくらでも買えるのだが、帯広の本店で買うことに意味があるのだ、と妻から云われていたので。

 駅の食堂を物色するが社員食堂で500円だった豚丼が1200円という値段なのでスルーし、<満寿屋>なる有名らしきパン屋で鉄板ピザ一切れと豆パン1ヶ、100円圴一<キャンドゥー>でウーロン茶を亜本屋さんから供給される。これをバス待合室にて食している間に亜本屋さんから搬出時の恐るべき計画を聞き暗然となる。札幌→帯広は高速バス、帰りの帯広→札幌は二人して伊藤運送トラックの助手席に同乗し、そのまま亜本屋倉庫に荷を降ろすと云う。

 6時、ポテトライナーという名前のバスで帯広発。眠ろうとするが一睡も出来ず。おまけに、やたらカーブ多く、積雪で路面悪く、縦揺れ横揺れ激しく、臭いも悪く、頸と肩も凝り固まって痛くなり、ずっと吐き気。車内テレビで『旭山動物園物語』のDVDを流しているが具合悪くイヤホーンを耳に当てる気になれない。横で亜本屋さんはずっと寝ているのだが。札幌に入ったあたりから雪が繁くなる。亜本屋さんは南郷で降車。10時半近く、札幌駅着。ようやく悪夢経由悪酔いバスから解放される。

 南平岸Maxvalu>にて、うどん、モヤシ、木綿豆富、酒一合パック(小山本家鬼ごろし月桂冠つきぶりっく各1)、計402円調達。盛大、壮烈に雪の降る中、水曜特売低脂肪乳(決して味が好きな訳ではないのだが)を買うべく<セイコーマート>へ向かっていると、いつも行くGS前で妻と出くわす。低脂肪乳を調達してきた由。萩原朔太郎全集にはキャンセルメールが来ていたと聞き愕然となる。梱包前にメールすべきだったのよ、それだともう少しは寝れたのに、と旅から疲労困憊で帰宅した夫に妻の言葉が浴びせられる。11時半帰宅。

 今日の気温−7・1〜0・1℃。受注、F・ブラウン『死にいたる火星人の扉』、『遊』1013号・1980年6月、ケラー『村のロメオとジュリエット』創元文庫。そのまま寝たらと妻は奨めるが、古本のホコリを落とさずには気のすまぬ自分は熱いシャワー。2時、鶏とタコの唐揚げ、ブリ塩焼き、おろし入り湯奴、ダイコンおろし、蒸しキャベツ&モヤシ、燗酒2合、ウィスキーお湯割り2杯、玄米茶。午前4時半就寝。