須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

土曜 古本市搬入のち旧友交歓

 10時半過ぎ起床。肉入りうどん、ナットウ、冷水、トースト2、ミニ餡パン1、牛乳、カフェオレ、紅茶、冷水。

 11時半、帽子かぶって外へ。窓から見て把握していた感じを遥かに越える風雨。霙ではなくすでに雨。道路、雪が融けてぐしゃぐしゃ。平岸6条郵便局前のポストに封書一通投函し羊ヶ丘通りを渡った時点で靴の中がびしゃびしゃ、こりゃあたまらん、と陋屋へ戻る。自分のサイフに1300円弱しか入っておらず、タクシー代支払いの用心のため妻のサイフから800円ばかり借り、靴下履き替え、長靴を履き、傘をさして再び外へ。

 タクシーを拾い、2千円以内で月寒ツルハ前まで行きますか?と確かめる。730円で到着。15分ほど遅刻して亜本屋さん倉庫着。メンバーは亜本屋さん、スサ家長男、伊藤通商(赤帽さん)二人、とスガの5人。第一、第二倉庫からトラックに本の入ったダンボール積み込む。約150箱。吹き降りいよいよ激し。トラックで伊藤赤帽社長、スサ長男、須賀の三人で狸小路ラルズへ。荷物おろし、カーゴに積んで8階の催事場へ上げる作業の繰り返し。風雨止まず。途中から3条ビル店からの荷物を軽赤帽車で積み込んで来た亜本屋さん、スサ父、赤帽社員さんも加わり6人で運搬。2時搬入了。10分飲み物休憩。亜本屋さんが所用で三条店へ行った後、スサ父は帰り、スサ長男は行方不明となりで、一人ダンボール箱をえっちらおっちら運び、すでに並んでいる亜本屋領ワゴン25台へ、単行本、文庫などの分野別に置いてゆく。3時半からは戻って来た亜本屋さんと二人で。4時過ぎ終了。風雨手当が加算されたのかいつもより多めのバイト代5千円拝受。

 外に出ると雨は止んでいた。<リーブルなにわ>で『ユリイカ』立読み。心地よき疲労感じつつ徒歩で札幌駅界隈へ。5時<紀伊國屋>。10分ほど店内ふらふらして昨夜連絡のあった友人長谷川を探す。2階に上がり、エスカレーターでまた1階に降りて行くと、上りに乗って近づいて来た長谷川と無事落ち合うという丸谷才一『裏声で歌ヘ君が代』的展開。ただしあれは女性だったけれども。

 五番館西武正面玄関へ移動、松尾、三上の二人と合流。松尾と三上は栄高75年卒業の3年2組。長谷川と自分は5組。松尾が、栄高卒業以来だっけ?と云うので、あなたの阿佐ヶ谷の三畳アパートに遊びに行ったでしょ、阿佐ヶ谷駅前<なとり>でヤスジと三人湯豆腐囲んで飲んだでしょ、僕が店番してた澄川の古本屋さんに寄ったことがあったでしょ、と記憶を補填してあげると、パズルが嵌ったようで、あ、ああ、と思い出していた。三上と口をきくのは初めてだが、お互い顔は見覚えがあった。

 近くの<R>という居酒屋へ。客を大量に収容することのみに熱心で、終始気遣いが微塵も感じられぬ店なり。通しの小鉢に大根薄切りのシャリシャリした凍ったのが出て来たので、これはわざとルイベにしているのかな、それにしてはボケた味で甚だマズイな、それに季節は冬、まして今日の冷たい雨に打たれた身体には暖かなモノが欲しいところだがオレはカネを出せない身分だしな、割り勘に参加しない男が味に文句を云うのもなんだしな......、と内的独白していると同じく大根ルイベを出された松尾が「ちょっとオネエさん」とクレーム入れるや、「申し訳ございませ〜ん。すぐにお取り替えします」とほどなく二人分の代わりが運ばれて来たが、長谷川、三上に出された分と同じ状態のモノで、凍ってはいないが冷たいのはやはりとても冷たい。そしてマズイ。結局、間違いなくレンジ加熱忘れなのであるが、本来は暖かな料理なのか冷たいモノなのか分からずじまい。それにしてもこの面妖な食い物はいつ作り置きされたものなのか。

 刺身、焼きホッケ、漬物、焼鳥、ソーセージ盛り合わせなどで、まずビール、あとは三上と自分は熱燗、長谷川と松尾は焼酎。名刺を貰うと、某住宅会社支店長、某外食レストラン・チェーン広報室長、某新聞社報道センター長、と皆さんそれなりに出世して「長」がつくのであった。が、振り返ってみれば自分も古書須雅屋の店長なのであって、それから薫風書林が会長を務める会員総数二人の札幌●●●ストクラブの書記長であったこともあるのだから、どうしてなかなかの者ではないか(?)。ミートホープや吉兆や白い恋人の話、日本経済の現状分析、札幌の某有名高級寿司店の値段と味についての考察、それから高校時代の友人たちの噂。噂になるとそれまで聞き役だった自分も俄然話に参加。容貌も体型も秀でているとは思えなかった同級生の◯◯が、なぜ高校大学時代を通してあんなにも女性にモテたのかという不思議についてなど。長谷川の妹さんアッちゃんの近況を聞きホロリ。熱燗四合ほど。居眠り少々。9時散会。札幌駅地下鉄改札機前で長谷川と別れる。

 酔いですっかり気が大きくなってしまい、南平岸Maxvalu>でニッカ・クリアブレンド、日本酒温情2L、せんべい、もやし1、プロセスチーズ、計1747円調達。9時45分帰宅。最低気温−1・4℃、最高気温6・6℃。

 風呂に入ろうとすると妻に止められたが、でいじょうぶなんですよ、へへっ、あっしは入るんでゲスよ、へへっ、と浴槽にお湯を入れ始めたところ(が栓は抜けたままでさっぱり湯は溜まっていなかったが)、突然、蛇口がカランが、カランと抜け落ちた。湯は浴槽に入らずカランの根本から洗い場へザーザー流れっぱなし。てえへんだ〜てえへんだ〜、今、重大な事態が発生いたしました〜、蛇口が崩壊しました機長!長年の金属疲労ですよ〜これは、根本がすっかり錆びて腐ってますぅ〜、あっしは何もやってませんからねぇ〜、と妻に報告すると、何やってんの〜、どうんすんの〜、バカッ!もうお風呂に入れないじゃない、ずっとシャワーですますつもり?もう寝なさいって、寝れ!、さっさと、と寝室に追いやられ、まあ、どうにかなるだろう、寿命だったんだから管理人さんに申告すればすぐ修理屋さん呼んでくれるだろ、しかし年末年始だし休みではないだろうか工事は、ああ、どんどん周囲が壊れてゆくなあ、と暗い気持で就寝。