須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

土曜 北18条で飲む

 正午前目覚まし止める。午後2時半起床。12時現在、くもり、6・3℃、湿度39%、予想最高気温7℃。15時現在で6・5℃、湿度38%。豊平区は4℃。おにぎり2ヶ、チョコレート、黒飴、牛乳、紅茶、冷水。午前中、札幌駅からススキノまで日ハムの優勝パレードがあり、寒空の下、紙吹雪が舞った由。

 6時前外出。地下鉄で北12条へ。弘南堂さんの均一棚で『上田五千石集』(俳人協会/昭和53/自註現代俳句シーリーズ)を買う。150円。これは自分用。庄一氏の姿は見えず。久しぶりにお会いした庄一夫人がカバーをかけて下さる。この嬉しい心遣いは他の古本屋さんも大いに見習わなければならないところである。もう十年以上も昔の話であるけれど、神田で修行したという◯◯書店では輪ゴムをかけて寄越すだけだったりして、これが東京方式なのかと驚いたり、△△書店では何冊買っても、いくらかさ張ろうとも絶対紙袋(それもお客が持ち込みで本を入れてきた袋)をくれようとはしなかったのを、某婦人の証言により自分は知っているのである。かつて店を出していた懐かしい通りをゆっくり歩いてみようと12条で降りたのだが、時間なく小走りで北18条駅へ。同じ通りとは思えないほどの変貌ぶり。店の両サイドにあった<大塚眼科>は改築してモダーンな建物に、倒産した<ホテル札幌會館>は白いシートをすっぽりかけられて改築中。極悪非道、狡猾因業な元の大家さんも同じ場所で盛業中の様子。ますます悪は栄え、悪ははびこる。

 6時半、遅刻せずに北18条駅改札前でMさんと合流。何故、北大理系の教授であるMさんと自分とが酒なぞ酌み交わす間柄かと申さば、奥さん同士が学生時代からの友人で、Mさんの文学好きもあって自分も知遇を得るに至ったのである。女子大時代の夢多き年頃に同じキャンパスで語り合った二人の一方は大学教授夫人、もう片方は売れない古本屋の女房。まさに天と地。ああ無情なるかな、人生。

 近くの居酒屋<塩野屋>へ。昔、よく行った北大通りの<おしどり>向いのマンション地下にある店。60前のご夫婦二人で切り盛りしている。他にお客は男女10人ぐらいの一団と男の二人連れ。顔つきと話題から、どちらも北大関係者とすぐ分かる。あら汁(何の魚かは失念)、ソイ刺身、鰯のたたき、牡蠣フライ、ビール1杯、日本酒燗で6合、冷やで1、2合。M先生は鶏唐揚げ、豚焼肉にホヤ刺しでビール大量と冷や酒。魚はほとんど食べないのにホヤ料理研究家のマスターの奨めで習練の末、ホヤを食べられるようになったと云う。馴れると独特の味がフルーツのように感じられ美味の由。妻の実家から貰った時は持て余した自分も一片のみ口に入れる。うーん。食通への道は遠い。
 話題は最近の学生の学力についてやお互いに飼っているインコの話や酒における武勇伝(雪の路上で行き倒れそうになったとか)など。途中から最近入院を経験した由のマスターも隣りに来て人生を語り飲み出す。最後、備え付けのピアノ弾き始めたMさんの慫慂により上田五千石の俳句と自作を朗読するなぞという恥ずかしいことをやってしまう。まだ残っていた北大生二人組にはピアノはともかく、俳句朗唱は大いに迷惑であったろうな。地下鉄最終で帰宅。零時半過ぎとなる。麦茶を飲んで就寝。