須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

家の中の殺意

 3時起床。昨日、一般人並に起きた反動がさっそく出た。蒸し暑し。晴。札幌の最高気温30 . 9 ℃の由。東京より札幌が先に真夏日になるのは25年ぶりとか。

 寝て起きたら、サッカー・コンフェデ杯、日本がブラジルに2−2で引き分けていた。意外なり。今のブラジルの調子が悪いにしてもアトランタ五輪以来の快挙である。イラク自衛隊車列を狙ったと思われる爆破事件発生。

 食事しながらネットで他人様の日記覗いて、インコの世話して時間が過ぎる。<はてな>からのお知らせメールあり。「読書日記@川崎追分町」というブログで、自分の日記が触れられているのを知り、早速見てみる。おお!確かに確かに。ありがたし。プロフィールに曰く「胃炎で休職しプチ引きこもり中のサラリーマンの日記です」。うーん、マンダム、じゃないって。古くて、どうもすいません。もう一度、うーん、なるほど。それで同じ引き蘢り同士、自分の書いているモノにリンクされたのか。「眠りが浅くて参っているので、レスリンを処方してもらう」、「人あたりに疲れたので..........」、「昨日の夜中に突然、大声で『イヤダ、イヤダ、イヤダ!」と寝言を言ったらしい。妻がショックを受けていたが、当方は全然、記憶なし。」、「通勤するだけで、足がとても疲れる。仕事に復帰できるのか、私」などという記述が目をひく。人の心配をできる身分じゃないわが身を忘れて思わず、大丈夫なのか、この人、と思ってしまう。迫りつつある支払いを考えると心配で朝まで眠れずに悶々とし、だが、どんなに苦しくてもその後、夕方まで眠れてしまう自分はまだまだ幸福なのかもしれぬ。

 6時過ぎ、外出。まだ少し昼間のほてりの余韻があるが、夏の夕方(と早朝)歩くのは心地よい。地下鉄駅近辺へ下る坂道で、手足のすんなりと長い、大柄小顔の美少女と擦れ違う。自分ら世代の青少年期には、周りにまず存在していなかったタイプ。
  <Maxvalu>2階のATMコーナーで札銀へ損保料千円入金。1階で今夜帰札する妻がもたらすであろう魚介類に備えて、酒「温情」2リットル・パック838円とワサビを調達。ウィスキーはまだあるが、もしも刺身が来ると、やはり日本酒が欲しくなる。少しでも金が入ると気が大きくなり、散財してしまう自分である。斜め向かいの<セブン・イレブン>で電気代4月分6052円、DION5月分4378円を払い、帰宅。

 一服してから掃除を始めるが、半分ほど終わったところで、妻が帰宅。ちょうど人が帰って来る時間を見計らって掃除をしているのは何かのイヤがらせか、と甲斐甲斐しく働いていた夫に文句をつけやがり、妻を見たインコたちは嬉しそうにさえずり始め、途端に家の中が騒がしくなる。で、掃除は途中で切り上げ、寝室の戸は半分ほど閉め、中が目に見えぬのを確認してから風呂。シャワーでは疲労が抜けぬので今日はたっぷりの湯につかる。
  例により、男にあるまじき一時間半の長風呂でリラックスした後、予想通り、岩内から妻が運んで来たイカの刺身、ひと塩の焼き秋刀魚、漬け物で酒。良妻なり、賢婦なり。日本酒二合、ウィスキー水割り二杯戴き、久しぶりに飲んだという実感を感ず。妻から岩内の義母の様子など聞きながら、こういうマネはするなよ、と釘を刺しつつ、パソコンでネットを見ながら酒を飲むという、甚だお行儀の悪いことをやっていると、「退屈男と本と街」というブログでも須雅屋の日記が紹介されたのを知って、浮かれて調子に乗りへらへらしていたちょうどその時、入浴済ませた妻が寝室に置いてある本の山を見つけ、家庭内に緊張が走った。

 「まだ詩集に懲りていなかったのか。いくらで、買ったの?えっ!3万?そんな大金で。一冊で元が取れるようなお宝が入ってるんでしょうね。」、と、まくしたてる妻に、いいや、あいにくとそんな高価本はないが量からいって格安であり、必ず儲かる、これからの須雅屋発展のイシズエとなる仕入れであり、これは、少なくてもそのイシズエの石の一つにはなる利益が出る口である、と、現代詩にはまるっきり理解のない妻に向かって、自分は弁解にあいこれ努めたのである。家の中の殺意が充満する前に。

 「で、君は何処に寝んの?」と問う妻に、今日片付ける筈であったが、昨日の疲労で体が言うこと聞かず、起きられず、恥ずかしながらご覧のとおりである、明日はなんとかするから、今日は押入れに代わりばんこに寝よう、と提案し頭を下げる。しぶしぶ承知はしたが長時間バスで揺られて疲労消耗し、一刻でも早く横になり、休息をとりたいであろう妻に対し、「じゃ、ワタシから先に寝かせてもらうから、ちょっと酔っぱらったし疲れたから、なんだか」と言い残し、自分は安楽を求めて押入れへ入り込んだ。4時半、就寝。