須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

6月4日(土)〜6日(月)

     6月4日(土)


 3時、電話のベルに起こされるも、受話器取った時には切れる。1週間ぶりにストーブを焚く。  
ラクテンへ11点入力UP。ロレンス関係ほかホンヤクもの。
 都内のオークションでルノワール2枚(「花かごを持つ女」「婦人習作」)が3億1千万で落札の報。購入者は広島県ウッドワン美術館の由。テレビニュースでは伝えられていなかったが、平山郁夫の「マルコ・ポーロ東方見聞行」も2億1千万で落札されていたらしい。以前、たまたま見たテレビ番組で(NHKの「わが心の旅」であったか、ともかく同系統のもの)、夫人連れで何度も訪れている中東の何処かの街の一角で、この画家が、寄ってきた子供たちに許可ももらわずにその子らのスケッチを始めた。描き終えるや、「ちょうだい、ちょうだい」と子供たちが一斉に差し出した手を、うるさそうに邪険に(と見えた)振り払い、寸秒でも時間が惜しいと言わんばかりに、礼も言わず、次の目的地に向かった。自分は何か、とてもいやなものを見た気がした。何度も行ってるのだから、ポラロイドカメラでも携帯して、謝礼代わり(モデル料として幾ばくかがあっても当然だ)に写真の一枚でもあげるぐらいの用意があって然るべきだろう。それまでは、特に好きでも嫌いでもない画家であったが、いっぺんにイヤになってしまったのである。何が、平和と祈りの画家かよ。
 横浜4×西武2、巨人2×ソフトバンク5。ここまでは喜ばしいが日ハムは中日に負けてしまった。
 日が変わって、清水哲男「増殖する俳句歳時記」を覗き、昨年末30日に俳人田中裕明が亡くなっていたのを知る。新聞を取っておらず、最近俳句雑誌も立読みしていなかったので、虚を突かれた感じ。享年45才。十代で頭角を現し、二十台の前半で角川俳句賞受賞、小澤實、岸本尚毅らと共に伝統派俳句を背負う俊才と誰もが認める(というよりも、すでに巨匠への道を歩みはじめていた)、俳句の神様に祝福されて産まれてきたような人。実生活でも、たしか何処かの大学の理系の先生であった筈で、自分のような者から見れば、なに一つ不足のない人生と映っていたのだが・・・・。

 断酒。


       6月5日(日)

 3時起床。曇り日。

 7時、テレビ野球観戦しながら、唐沢俊一氏のmixi日記で昨日のトンデモ本大賞2005発表大会の様子読む。佳声先生の紙芝居が面白そう。オタクたちの熱気で会場に異臭が漂っていたというのが、リアリティあり過ぎ。

 9時、NHK「一瞬の戦後史 - 写真が記録した世界の60年」見る。スタインベックとキャパ、連れ立って訪ソ、規制されてほとんど取材も出来ず仕舞いであったそうだが、それでもしばらく滞在して帰米したところ、すっかり共産主義者のレッテル貼られていたという。

 オークションへ出品していた武部本一郎「宇宙の騎士たち」にも終了5分前に入札あり。商品の詳細説明の欄に、「こちらにも女性の絵あります」と注意書きを書き足したのが、効を奏したのだろうか。なんかキャバレーの呼び込みみたいなんであるが。

 12時過ぎ、琴似の<ブ・センター2分の1>に自分の蔵書を売却しに行った妻が食料を確保し帰宅。◯◯の◯◯◯ーはPM11時半を過ぎると、総菜コーナーのプライスが3分の1になるのだそうな。これで、数日生き延びられる。あと、目下の問題としては、ガス代の期限が明後日の水曜に迫ってきつつある。ガス台を所有しておらんので、調理には影響はないのであるが、ガスを切られると数少ない慰安である入浴まで叶わなくなるのは、あまりに悲しいではないか。
 「少年版乱歩選集」の「三角館の恐怖」を5月13日に送本した客からまだ金が入らない。25日頃に一度、「どうなってまっか?」とメール送ったら、折り返し、「現在ロサンゼルスにおるけん、帰り次第、6月1日には送金するけんのぉ」と本人なのか家族なのかは分からぬが、ともかく返信が来ることは来た。が、今日に至るまで入金がないので、「その後、どうなってまっか?」とまた催促しておく。この金が入らぬと風呂に入れぬ。つまり、人間らしい生活ができぬときている。押っ取り刀でやられてはまったくもって困るのである 

 深夜、ラクテンがEasyseek時代の2月に登録しておいた本にハンドルネームで質問あり。物は林房雄明治元年」、地平社手帖文庫の1冊。購入の参考にしたいので、本の縦横の大きさ、頁数、内容を教えてくれろ、という。この文庫、奥の書庫にあり、諸般の事情により,取り出すまでに、ゆうに30分はかかるのである。諸般の事情とは、書庫の入口を塞いでいるダンボール箱とその上に積まれて本を移動し、めでたく発見確保の後は、またそれらを元に戻さなければならない、という大事業を成し遂げなければならないのを指す。ああ、めんどくせえ。だってね、こういう質問してくるお客って、たいてい買わないのよ。それでも、入浴後、やはり30分かけて現物取り出し、返信する。ついでに、表紙にある赤マジックのシミみたいもの、これは元々あるデザインの模様で、このシリーズは全部、こういうシミを思わせる模様が何らかの形で印刷されてある装丁であり、保存も昭和22年の刊行にしては普通である旨も補足説明しておく。お客さん、買ってね。
 ラクテンへホンヤクもの10点入力UP。
 横浜3×西武1、巨人1×ソフトバンク4(城島がオドロキの三盗)、日ハム6×中日7。 
 断酒しようと欲しているわけではないが断酒。なにごとの不思議なけれど。



      6月6日(月)

 午後起床。快晴。4時、郵便局へ行き、妻の振替口座から(妻の許可の上である)金おろし、一旦帰宅。

 郵便受け覗くと、妻宛に東京文京区のS書店さんからハガキ。高齢のため5月で廃業された由。とても残念だ。文系全般の洋書の手書きのカタログをいただいていたが、モデレートな価格に加えて、送料サービスやオマケまでつけてくれるので、さして注文もしないのに申し訳ないと妻が感謝していたお店である。悠々自適の老後になるまで御商売ができたのだから、立派に成功された古本屋さんといえるだろう。自分などはいつまで古本屋をやっていられるか分かったもんじゃないのであって、廃業の危機が常にあるんであるからして。

 昨夜の「明治元年」に注文メールが来ていた。4800円。やれ、よかった。意外なことに女性。ただし郵送先が郵便局留めというのは、何かワケありか。ただちに、送料加えた金額と送金先口座を記した受注確認メールを送信。

 7時半過ぎ、平岸駅近辺まで歩き、某金融機関へ金払う。1万5千円。帰りに映画関係専門<R平岸>さんへ寄る。外の50円均一で藤沢周平「小説の周辺」(文春文庫)、「ジャズ喫茶マスター、こだわりの名盤」(講談社α文庫)を自分用に選んで差し出すと、まるごと恵んでくれた。こちらは『彷書月刊』昨年11月号贈呈し、雑談。『彷書』掲載の「ブンブン堂のグレちゃん」が面白いと言うので、店のモデルは<加藤京文堂>であると数少ない教示なんかをしているところへ、妻から電話あり、パソコンがおかしくなった、とSOS求めてきたので走って帰る。20分ほどして、すっかり汗まみれになって帰宅してみれば、今しがた復旧したところだそうな。人騒がせな女である。この阿媽ぁと叫びたいところであるが、腕力では負けるので、大人しくシャワーを浴びた。

 ラクテンへ7点入力。断酒。6時就寝。