須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

金曜  麦藁帽子とスキンヘッド

 午後4時半起床。洗顔のみで外出。暖か。マラソンで薫風佐々木宅へ『北方ジャーナル』を届けに向かう。野球帽的キャップ冠った作業着姿の老人が佐々木宅の塀の外に設置された金属製ゴミ捨て場を叩くなどして点検している。塀の中には麦藁帽子姿の男性がこちらに背を向けて鎌を手に熱心に草刈りの最中。主人に頼まれた業者のチームが二人で来ているのか思ったら、自分の視線に気づいてしゃがんだまま振り向いたその顔は薫風佐々木氏その人であった。冬用防寒長靴、長袖、ゴム手袋、頸にタオル、玉の汗を浮かべた顔に麦藁帽子という完全防虫作業スタイル。放置していた雑草が繁茂して道路にはみ出したのを、ご近所のオバさんが刈り取るようになったし、この先、暑くなる一方で益々雑草の跋扈をゆるす結果も想像されるしで、ついに自らの手で始末すべく決起したというか、腰を上げたらしい。一軒家に住むというのも何かと面倒なものなり。組合古本市の目録原稿のこととか、昆虫はホント恐ろしいし、植物って実はブキミだよね、などという話を5分ほど。

 郵便局ATMで4千円おろし、元〈セイコーマート〉の〈LAWSON〉平岸8条店へ。『北方J』と陋屋マンション管理に関する某資料をコピー。と、突然レジから大声。レジ前で清算中のマスクにスキンヘッドの男が身体を捩って、後ろに並んでいる長身の初老男性(といっても自分と同年代か?)を関西弁風な言葉で恫喝している。マスクをしているので確とは判らぬが、三十歳前後だろうか。後ろの男性は平謝り。Tシャツ、ハーフパンツ姿、肥満気味だが小型プロレスラー体型のスキンヘッドは、駐車していた大きめのワゴン車に乗り込み走り去ったのだが、金曜夕方5時過ぎに、このカジュアルな服装でコンビニエンスストアに現れたこの男は工事現場関係からの帰りでもないと見られ、いったい何の仕事をしているのだろうかとちょっと気になる。初老男性の方はタクシー運転手さんであったと判明したが。

 調整乳152円を購入し5時半帰宅。ジュース、きな粉すり胡麻ホットミルク、冷水。8時、うどん、ナットウ、冷水、食パン2、カフェオレ、紅茶にて固形物第一食。

 14日、西江雅之膵臓がんで死去の報。77歳。16日、絵本作家梶山俊夫、肺炎で死去、79歳、こちらは浪速書林の目録掲載品でよく名前を見た覚えがある。

 零時前、A出版Iさんからメール。問い合わせていた装幀家Sさんの移転先の件。本日の気温、14・8〜24・7℃。

 午後2時半〜4時半、入浴。上がってネットからアスタルテ書房主人佐々木一彌氏が16日に亡くなったのを知る。何とも云えない気持なり。お会いしたことはないが、この三十年の間に電話では何度か話したことはある。自分が店を初めて間もない頃、アスタルテ書房が刊行した新刊を分けて貰い、店を閉じて移転した後、世紀が変わった頃であったか、手持ちの澁澤本と種村本を買ってもらったことがあった。ご店主の作品だったと云えようお店に一度も行けなかったのは悔いが残る。92年だったかの組合旅行で大阪に三泊した時、薫風書林の提言に賛成して、見学に行くべきであったなあ。相変わらず(そしてこれからも)後悔ばかりの人生だ。61歳。最近の古本業界、この年代で亡くなる人が続いている。自分ももう目前な訳だが……。

 最近出た或る本の情報をネットで知り、「○○○書店の○○ランキング4位とはなあ……、なんであんな本が売れるんだ!世の中、目のない連中ばかりだ、本の中身見てないけどさ」と大いに腐り、悔しい思いを内的独白。

 朝7時、イナダ刺身、レンコンもち中華風アンカケ、ダイコンとキノコ炒め、燗酒1合、ワカメみそ汁、米飯少、玄米茶。五日ぶりに断酒を解く。書見少。三枝昂之の啄木論と古山高麗雄。午前10時半就寝。