須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

金曜 小樽往復、HARD TO FINDに石川浩司

 午後2時半起床。12時現在、雨、22・3℃(最低21・0℃、最高24・5℃)、湿度87%。15時現在、曇り、23・9℃、湿度80%。米たのむ。ななつぼし5kg1690円。うどん、ナットウ、冷水、トースト1、ミニあんパン1、牛乳、紅茶。

 4時半、折りたたみ傘を紙袋に入れ出発。地下鉄で札幌まで。JR札幌駅西口改札前に5分遅刻して5時5分着。薫風書林佐々木君と合流。JR切符小樽まで620円。佐々木君がビール券を持ってきたと云う。ホームに上がりキヨスクのオバさん店員さんに「ビール券使えますか?」とオジさんの自分が訊くと「使ってません」という不思議なお答えで、「仕方ありませんね、買いましょうか」という佐々木君の提案で発泡酒350ml165円を各自1本ずつ購う。時間帯のせいか小樽行きかなり混む。自分はすばやく座ったが佐々木君は手稲まで立ったまま。気のせいか周りの視線が何か冷たいのを感じ、どうやらそれは一日を勤労に捧げた真面目な勤め人とはとても見えない怪しい男たちがカンビールを飲んでいるためらしいと分かる。車窓に黄昏ゆく風景を眺めながら飲む発泡酒美味。小林多喜二についての話などしているうちに6時前小樽駅着。

 駅前長崎屋地下へ。サッポロクラシック500mlとキリン円熟黒350ml各2本を佐々木君持参のビール券で調達。太っ腹な佐々木氏がチキンナゲット50円引き150円も購入。

 アーケード街、電気館ビル1階すずらん薬局向かいの居酒屋前ベンチでビールを飲む。日本全国現在では異国人は何処においても珍しくはないと思うのであるが、小樽は札幌よりも外人遭遇率が高いのではないかと感じた。まず、JRを降りたホームで旅行者らしきヒップの大きい白人大男と大女4、5名、長崎屋の出口でヒップの大きい白人ファミリー(子ども男女は10代前半)4名、アーケードで自転車を漕いで行くアラブ系?男1名。小樽に到着してから15分ほどで約10人のフォーリナーとすれ違った計算になる。などという考察を語り合っていたところ、前を通り過ぎてゆく長い髪の女性の横顔に見覚えあり、あ、と声を上げたが、あちらもこちらを、あら、という顔で見返し立ち止まった。最近、北海道文学館の吉増剛造イベントでよくお見かけする人であり、我々と同じく小樽文学館に元たま石川浩司さんコンサートを観に来た由。書肆吉成君の友人であるのは知っていたが、薫風佐々木氏の娘笹木桃ちゃんの知人でもあるそうで、以前から桃ちゃんをああいう素敵な子に育てたお父さんにお会いしてみたかったのです、との嬉しい言葉に、佐々木氏、名刺渡そうとするが、ビールの酔いのせいかなかなか出てこず。

 シラクラさんというお名前の彼女が文学館に向かった後もベンチにしばらく居座り飲み続け、ようやく腰上げて2分の1ブックさんを覗こうとするも6時閉店の由で店内の灯りも消えており、まるで伊達紋別の駅前みたいだなあ、と好き勝手を云い合いながら歩き、小樽文学館に到着したのが6時50分。チケット代2500円払う。玉川さんに『札幌人』夏号掲載拙文「『アゴ傳』の中の小林多喜二」お渡しする。桃ちゃんに挨拶。

 7時からHARD TO FINDの演奏始まる。ケルト・ミュージックのバンド。音楽もよかったが、こういう自分とほぼ同世代の人たちが20年も札幌を中心に活動を続けてきたことに感銘を受けた。
http://www.hardtofind.jp/
http://www.myspace.com/hardtofindjp
あまり好きな言葉ではないが癒し系の部分もあるかと感じられ、宮沢賢治の「星めぐりの歌」なんかも合うかもしれないと素人考えに思った。休憩タイムにトイレへ。後から石川浩司氏がニコニコしながら入ってくる。体型に親近感覚える。8時過ぎから石川浩司劇場。ギター弾きながら歌い、最近は友部正人谷川俊太郎なども出ているポエトリー・リーディングのイベントに召ばれたりしているそうで途中で詩の朗読二篇。歌は「無礼講」「冥王星」などなど。詩は、山羊を殺した、とかいう相当な長さの物語詩を諳んじてみせた。ええ、文学館ということで〜、と曲の合間に必ず無理矢理、文学の二文字を枕に入れた話をして笑いをとっていたが、実際、歌詞がなかなかにブンガクしている人ではないかと思えた。それから、顔が演劇している人、芸術している人である。歌いながら、朗読しながら、あちらの世界にイッテしまっている没我状態ような顔をするのだが、決してそんなことはなく、曲が終わると元にもどる。最初の曲で歌詞を忘れて演奏中断し、早速受けていたが、あれも忘れたフリをして笑わせる、コンサート前から立てていた作戦だったのだろう。狂気かと見えて、冷静に計算されたステージなのだと思う。金を取って客の前に立つからには満足させずには帰さないというサービスの人、特異なエンターテイナーと見た。プロならば恥は忘れて客を楽しませなければならないのだなあ。実にインパクトのある濃い時間であった。隣の席にいた若い女性は体をくの字に曲げてほとんど笑い通しだった。小樽文学館の風通しのよさというか鷹揚さにも感心した。最後にHARD TO FINDと共演(ハードさんのレーパートリー)2曲、アンコールでも2曲。ここでは石川氏、本職のパーカッションを演奏、跳ねる、跳ぶ、踊る、の躍動ぶり、HARD TO FINDとも何故かよく合いみごとな演奏だった。終了後、妻から託された昔のたまコンサートパンフにサインして頂く。

 <Lawson>で残っていたビール券でサントリー発泡酒500ml2本、酒パック一合108円購入。小樽の何処ぞで飲みたかったなあ、せめてそういう身分になりたかったなあ、と後ろ髪引かれながら現在の境遇を呪いながら駅へ。JR車内で発泡酒飲みつつ、人生のはかなさを語り合い佐々木君と二人で帰途に。札幌駅で店へ戻るという佐々木君と別れ地下鉄で南平岸。<Maxvalu>でモヤシ、白鹿200mlカップ買い、傘さして零時前帰宅。

 シャワー。焼きカレイ、生ハム、蒸しジャガ薯と蒸しモヤシ わさび漬け、黒発泡酒キリン円熟350ml、燗酒二合、玄米茶。午前6時半就寝。