須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

水曜 初セリのち新年会

 8時目覚め。9時起床。トースト2、牛乳、カフェオレ、紅茶、冷水。10時15分出。

 10時45分頓宮神社着。札幌古書組合月例交換会。先月金券分5740円支払う。薫風書林の姿見えず。昨夜は元気そうであったが肉体労働が祟ったのか。琴似閉店の口のほか、荷物少なし。芝居関係、書物関係、新しめの詩集、文庫新書などセコハンがほとんど。入札意欲そそられたのはサバト館の『生田耕作評論集成』4冊揃いの全冊署名本と山本太郎の第一詩集『歩行者の祈りの唄』見返し少書き込みのみ。しばし迷って今日は当初の予定通り何も買うまいと決める。生田本、まあこんなもんでしょうという数字を頭の中に書いていたのであるが、落札価は想定の二倍半。しかも三枚札の中札なので、その下札以上には上札を記して入札した誰かが他にもいることになる訳で、自分の相場感が全然錆び付いているのか、現在の相場感覚から置いていかれているのか、と不安覚える。

 釧路のエミリオンさんから新年挨拶を受く。こういう律儀な人は今までいなかったので新鮮だ。札幌古書組合のセリ場も最近は女性が4人もお茶など飲みながらおしゃべりなさったりしており花柳幻舟、花咲く乙女たちのセリ場という感じで雰囲気も明るくていい。じゃんくさんに『秘密探偵JA』レンタル頼む。萌黄さんからグラシン紙受け取る。ついでに2日の分支払い、計1740円。会計理事が来ていなかったので組合費は来月払いとなり大いに助かる。正午前、神社を後に。<リーブルなにわ>で文芸誌ちらっと覗く。同じような人ばかりの名前が並んでいるのでどの雑誌も同じように見える。

 南平岸Maxvalu>で、電池、うどん、ナットウ、冷水、計622円調達、1時過ぎ帰宅。即GS往復、灯油15リットル1455円確保。12時現在、晴、−2・6℃(最低気温−7・9℃、最高気温−1・4℃)、湿度34%。うどん、ナットウ、冷水、ミニ餡パン1、紅茶。受注『刑事コロンボ 白鳥の歌』、ミッキー安川ふうらいぼう西部を行く』中三コース付録。梱包4。

 6時半出。地下鉄で札幌駅。7時過ぎ、京王プラザホテル3F琴の間到着。札幌古書組合新年会に出席。ちょうど最初の一同での乾杯の直前。シャンパンのあとは自分はビール、日本酒燗。薫風書林の姿なし。昨夜は本日の宴会出席に前向きであったのに、家で臥せっているのか、大丈夫なのだろうかと気になる。牛タン、コールドサーモンの前菜に始まった和洋中のミックスコースいただきながら、去年の会と同じく指名された皆さん方の述べる「今年の抱負」を聴く。「自分にキビシク」とか「いかに楽して儲けるか」とか、なかなか興味深き話多し。自分の番が廻って来たので「昨年の目標は札幌古書組合に居続けることでしたが、どうやらそれは達成されて今日の日を迎えられてここにいるのありまして、これもひとえに皆々様のお陰でございますが、本年の目標も札幌古書組合に在籍し続けることであります」と話し失笑をかう。卓上の料理の皿が下げられる度に隣に座った●●堂君が「これで終りですかね?」「これでオシマイですかね?」と不敵な笑みを浮かべながら自分に訊くので、「そんなことないしょ」「まだ出るっしょ」とその度に応えていたのだが、そのあいだも●●堂君は十数年前の釧路大市準備手伝いに赴いた際のスガの酒での失敗を(悪酔い、嘔吐激しく、翌日起き上がれなかった)吉成君や北天堂前田君に披露し、また「さっさと古本売るのを頑張ればいいんですよ、古本屋なんだから」と◎◎氏への批評など的を射て鋭く、なかなかこの男、記憶力も観察力もたいしたものだと感嘆したりもしたのであるが、何ごとにも終りはあるもので杏仁豆腐の後に出されたコーヒーでラストとなった。9時、いよぉ〜、お手を拝借、と三本締めで一次会終了。

 一次会の後は、おとなしく淋しく虚しく一人、サミシーッ!と財津一郎しながら帰途につく予定であったが、お金の心配要りませんから二次会もどうぞ、とのお声が天から降り来たり、ええ、そんな素晴らしいことがあっていいのか、ほひょひょひょ、と浮かれた自分はあっさり予定変更、タクシー分乗して二次会会場、南5西4南興ビル8F<上◯blue>へ。自分の記憶では組合宴会の二次会でこれほどの人数が参加するのは初めてだろう。ウィスキー水割り飲む。「中国の西安から来ました/誕生日:1987年10月24日」と裏に書かれた名刺を賈佳(ジャジャ)さんから頂く。残念ながら自分以外の全員にも渡していたのだけれど。おお、携帯のナンバーが書いてあるぞ、と若者たちが喜ぶので、今はたいがい、どの店の名刺にも書いてあるよ、プライヴェートとビジネス用と二本持ってんじゃないの、と解説する。店の女性の中で一人だけチャイナドレスではなく、胸元を大きく開いたドレスの中国人だか日本人だか不明の、若年の頃の辺見マリ坂本スミ子みたいなグラマラスな人が我々の席についてダイナマイト!エクセレント!この店は店の中に小宴会用なのか別室があるのだが、そちらでカラオケ使用している最中はこちらは歌えないというのが欠点といえば欠点。「キサナドゥーの伝説」1曲歌う。11時(?)終了。

 店を出るともう一軒という雰囲気が自分の周りに漂い、じゃ行きまひょか、という話になって<焼鳥じゃんぼ>へ案内。三次会は弘南堂庄一氏、旭川△△君、文教堂恊治君、伊藤書房伊藤ヤスノリさん、withスガの5人のメンバー。焼酎を一本とり、焼鳥などつつく。三宅マスターから偶然隣席で飲んでいらした松尾真由美さんに紹介される。おそらく今度何処ぞでお会いする機会があっても須賀を個体識別されることはないと思われるが。松尾さんが去って、あの人、H賞詩人よ、けやき書店の目録でも『密約ーオブリガート』っていう受賞詩集にちゃんと値段ついてんの、と解説すると皆驚く。岡林信康のライブが流れる中、ネットや目録、昨年秋の大市、一代目父と二代目息子との関係、など話盛り上がる。2時半終了。庄一氏が全額持ってくれて「スガさんについて来てよかったあ」と△△君の賞讃を浴びる。

 外へ出、庄一氏、伊藤ヤスノリさんの二人がタクシーに乗るを見送り、自分も帰ろうかなと思ったのだが、村田君は旭川、恊治君は北広島、朝にならないと帰れないのであって、じゃ、もう一軒行くべえか、と話はまとまったが、さて何処にするべえか、と知ってる店の一、二軒を思い浮かべ思案に及んでいると△△君が、「今の店はだめですか」と提案し、おお、灯台下暗し、それは意外な盲点、素晴らしいアイディアだ、とまたまた<じゃんぼ>へ三人で戻り、すみません、いろいろ検討の結果戻って参りましたあ、とマスターに挨拶、供された漬物でさきほどの焼酎ボトル残りを飲む。△△君は優雅な独身者かとこれまで勝手に思い込んでいたのだが、聞けば奥さんも子供さんもいる立派な家庭人をやっているのを今回初めて知り、ニンゲンの子供を育てているというだけで自分は彼を今までより格段に尊敬したのである。また、かつてこの「暗黒世界」に書いたある日ある夜の飲み会の記述に話が及び、あれウチのオヤジでしょ?と指摘され、これ、どう見てもウチのオヤジだよな、どう読んでもウチの社長ですよ、とPCディスプレイの前で社員一同笑い転げていた由を聞かされ、ああ、よかったあ、怒ってなくて、さすが△△さん一家は心が広いや、と安心、感嘆、△△父子にますます好感を抱くに至ったのである。

 自分らの四次会が始まってからの来客はゼロ、マスターの迷惑省みずに長々飲んでダベっていたのだが、マスターがカウンターにうつ伏せになって寝始めたので、これはいくらなんでもマズイと散会。お勘定900円(なんと良心的であることよ!)二人が持ってくれる。恊治君から600円をカンパされ、ススキノ駅方面へ歩いて行く二人と別れ、中島公園駅まで歩いてからタクシーに乗る。南平岸駅までタクシー代1450円。午前5時近く帰宅。玄米茶と紅茶を喫し、ああ今日は久方ぶりにたくさん飲んだなあ、それにしても薫風書林は無事なりや、と思いながら就寝。