須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

日曜 嵐の訪問者

 午前10時半、寝込みにチャイム鳴る。酒でも飛んで来たかと出てみたら社会保険事務所の人。午後4時起床。15時現在、雨、13・2℃、74%、日中最高気温14℃。
 根室で観測史上最大の強風。停泊中の漁船七隻転覆の由。札幌は風は強いが台風並ではない。安倍首相が中国訪問。パのプレーオフ第一ステージ(「ステージ」のかような使い方はオウム思い出すな)、昨日西武松坂に1−0完封されたホークスが11−3で勝利。一応勝ち上がって来たホークスを叩いて、ハムが日本シリーズに出場というのが、理想の展開なのだけど。
 4時半、萌黄さんから電話。リブロ平岸さんに用事があるので、ついでに預けたいものがあるからウチに寄りたいとおっしゃる。5時、リブロさんから電話、萌黄さんがこれから向かうのであと5分ぐらいで着きます、と。ウチの部屋は分からないだろうと思い、玄関前に出て待つ。雨は降っていないがすでに暗い中を風が強く吹いている。こんな悪い天気なのに外出していたらしき老夫婦や、子連れの若夫婦の住民たちが次々とクルマで帰ってくる。自分に胡散臭気な視線を送り通り過ぎて行く。5分待ったが来ない。10分待ったが現れない。MS前の道路通り過ぎるクルマを見ながら15分近く突っ立っていたところへ萌黄車到着。南陀楼綾繁著『路上派遊書日記』を渡される。これはオマケとストーンズのライブ・テープと本も一冊。いやぁ、寒風の中、待った甲斐があったわい。
 6時、うどん、ナットウ、冷水、トースト2、ミニあんパン1、バナナ1、紅茶にて第一食。
 『路上派遊書日記』(右文書院)はブログ「ナンダロウアヤシゲな日々」(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/)の2005年一年分を収録。二段組み(註を含めると三段組)435頁の厚冊であるが、これでも元原稿を三分の一に圧縮したものの由。著者南陀楼綾繁さん、浅生ハルミンさん(http://kikitodd.exblog.jp/)、遠藤哲夫さん(http://homepage2.nifty.com/entetsu/)のお三方によって付された詳細な註が頁下段にずずずずずーと三百も並ぶ。付録の栞と後書きを読んでみる。栞でさっぽろ萌黄書店坂口仁氏が初対面の印象を記している。<イラストから受けたユーモラスな印象もあり、ぷにょぷによした体つきの、少しばかり「柔(やわ)」な人物が現れるものとばかり思いこんでいたのである。/まったく違った。「柔」なところなど微塵もない、愉快にして「剛」の男(ひと)がいた。>とは同じ折にお会いした自分から見ても実に的確な表現だ、と思う。とてもいい装丁なのだが、汚れやすそうな本なので、折ったり、捻ったり、叩いたり、嘗めたり、齧ったり、縛ったりせずに、気をつけて読まなければ。
 ☆ーーー南陀楼綾繁著『路上派遊書日記』はアマゾンでも注文できますが、<さっぽろ萌黄書店>(http://www.d2.dion.ne.jp/%7Emoegi/ )でもサイン本を扱っております。本好き、古本好き、古本屋と見ると入らずにはいられない人、ぷらりぷらりの本屋周りや古本市を漁るのが趣味である人、本を買った後に喫茶店でコーヒーなど啜りながら繙くのが好きな人、自転車でお買い物をしたり図書館に通ったりしてる奥様や青年、私小説を集めている人、ミステリが好きな人、海野弘さんのファン、小沢信男さんの愛読者、堀切直人さんを追っかけている人、岡崎武志さんを師匠とする古本マニア、映画フリーク(主にB級の)、ジャズ・ファン、<アケタの店>に通っている人、ムーンライダース・ファンの人、細野晴臣の音楽がフィットする人、ふちがみとふなとのライブに行ってる人、マッチ箱やラベルなど何でもいいですが(人体や大麻などは除いて)コレクションに情熱をお持ちの人、とんかつうどん、コロッケうどん、カツカレー、もつ焼き、ラーメンタンメンワンタンメン、など外食B級、C級グルメを追究している方、黄昏に立ち飲み屋でチューハイを一、二杯やるのが好きなあなた、編集者志望やライター志望のキミ、などなど当てはまる大勢の皆さん、読んでみましょう、買ってみましょう。札幌圏の方は萌黄書店に駆け込みましょう。奥尻島礼文島、網走、紋別稚内に、国後島ユジノサハリンスクウラジオストックなど、遠方にお住まいの方も大丈夫。通販で買えます。さあ、すぐに萌黄書店に連絡をしましょう。注文をしましょう。ロシア語版の出版は数年先になりそうですが、日本語版は萌黄書店に置いてます。注文殺到につき、残部僅少になるのも間近とか。今なら間にあいます。かつて渡辺修三詩集『ペリカン島』(昭和8年・ボン書店刊)を小脇に抱えてベレーを被ったターキー・ミズノエが銀座のペーヴメントを颯爽と歩いたように(cf. 内堀弘『ボン書店の幻』)、『路上派遊書』という書名部分をさりげなく見せながら、この本を手に地下鉄やバスに乗ったり、街を散歩するのがこれから読書人のトレンドになるかもしれません・・・・・ということはそうはないかもしれませんが、本好きなら、そして日記好きなら買って損はない本であります。(萌黄書店さんの正式な屋号は<さっぽろ萌黄書店>です。お店へ寄った時は、「ご主人が、あの、さっぽろ萌黄書店さんなのですね?」と気軽に声をかけてあげましょう。お茶が出たり、お酒が出たり、というような特別なサービスはないと思いますが)ーーー☆
 もう一冊、頂いた方の『胆振文学散歩ー登別・伊達・西胆振』(文:竜泉/え:江頭洋志/1995年)もぱらぱら。自分が伊達の産なものだからくれたのだろうけど、これは役に立つ。ありがてぇ。目次で木村南生という名前が目に入る。本名は木村楠雄。昭和16年、「古譚の唄」で中央公論新人賞を受賞している作家木村不二男の弟で、本人も小説を書き、平成3年までに9冊の創作集がある。でも、この人、自分としては何より伊達中学に通っていた時分の木村先生その人なのである。国語の先生であったが、自分は習わなかったのでその授業風景は知らぬ。それよりも風紀の担当教員として有名であって、生徒から蔭で「大魔神」という名で呼ばれ怖れられており(大魔神佐々木の前にも大魔神が伊達には存在していたのだ)、自分も些細なことであったのに、一度頭に拳固を貰った覚えがある。昔の、少なくとも、あの当時までの先生はよく生徒を叩いたものだ。この『胆振文学散歩』刊行の時点で85歳前後であったようだから、今はご存命かどうか。面白いもので、拳固をもらった恨みは消えているが、言葉で加えられた屈辱恥辱は今だにに忘れられないものがある。今日でも眠れなくなるほど悔しく、許し難いのは室蘭栄高校1年時の数学教師、スギヤマ先生、あなただ。
 零時、入浴。1時半、チャーハン、豚トロ、シジミのみそ汁、コーンスープ、緑茶にて第二食。受注2件、澁澤龍彦文庫「裸婦の中の裸婦」、矢作俊彦「リンゴォ・キッドの休日」。日記。入力しながら貰ったストーンズを聴く。ああ、これで酒があれば云うことなしなのであるが・・・。午前9時就寝(予定)。断酒。