須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

日曜 観楓会

 徹夜。正午、連載7回目原稿終了。小笠原、菊田、両氏に送信。正午半、横になるが眠られず。30分ほどして起き上がり、食パン1、牛乳、紅茶にて第一食。

 1時25分出。晴天。旅行日和。地下鉄で大通り。地下街の〈富士メガネ〉で調整。NHK前に停車していたホテルの送迎バスに乗り込み、挨拶の後、弘南堂さん、市英堂さんの後ろの席に座る。十数年ぶりに弘南堂さん一代目との旅行、しかも宿も同室と知り、今日は飲み過ぎないようにしなければ、以前東京旅行で仕出かしたような二日酔いになって醜態をさらさぬよう気をつけなければ、と自戒。

 2時ちょっと過ぎ発車。定山渓まで少しでも仮眠しようと目を瞑ってシートを倒してに背をもたせかけたが、弘南堂さんが市英さんにされる古本や古本屋話が耳に入り、それがまた当然オモシロくもあるので、つい途中で口を挿んだりもして、眠気訪れず。後方には空席が目立つが今更席をかえるのも憚られ、眠られぬまま座り続ける。宿に着いたら、さっさと風呂を済ませて1時間ぐらい仮眠しようと計画を変更する。途中、GS跡が〈ラーメンのさんぱち〉に改装されている店の脇を通り、〈さんぱち〉は古書須雅屋とたしか創業年が同じで、場所も北大前通りの数丁離れた近所だったこと、市英さんに解説する。その〈ラーメンのさんぱち〉は現在、多くの店舗を持ち、自社ビルを建て、テレビCMも盛んに流している「企業」となっているのであるが。

 3時、定山渓〈ぬくもりの宿 ふるかわ〉着。車内でさんざん乗務員さんが吹聴していた、入口ホールに用意されている筈との甘酒はまだ出来ておらず、5階の部屋へ。お茶で一服の後、すぐに資料広げて弘南堂さんが組合史に関する話を始められる。市英さんはすでにご存知の内容であり、周囲には他に人もなく、これはもっぱら自分に向けての話である訳であり、思わず姿勢を正す。組合史執筆用に弘南堂さんが作成された年表のコピーを1セット戴く。すでに吉成君には渡してある由。持参オニギリを二ヶ食す。
 4時、皆で風呂へ。弘南さん、市英さんと別れ、エレベーター前で一緒になった文教堂協治くんと1階の露天風呂へ。ついで8階の大浴場へ移動。古本屋さんたちの声を聞きながら湯につかる。上がったところで札幌ブック・フェスティバルのイベント終えて駆けつけた同室の吉成君と遭遇。裸に眼鏡姿を見られる。
 5時過ぎ、部屋へ戻る。あらかじめ理事さんたちの配慮で、ビール、ウィスキー、焼酎、日本酒、ソフトドリンク、ツマミが各部屋に用意されており、冷蔵庫の中の缶ビール1本ぷしゅ、と開けて喉を潤したい処であるが、洋室で大相撲を観戦中の弘南さん、市英さんお二人ともビールを飲んではいないので、自粛することに。隣の座敷に座布団三枚敷いて横になるが眠られず。
 6時半から食事。宴会用大座敷へ。左隣は市英さん、右隣は宴会だけ参加の田原さん。田原さんは元々飲まない人生を送っているお人のようある。しばらくして、いま一人の同室三浦書店君到着。自分はビール、ついで日本酒の常温と燗。料理は宣伝どおりでなかなかか。その分時間はかかるが、何時間も前からの作り置きはないようであった。燗酒を頼むも、従業員さんの人数が足りないせいなのか出てくるまでに1時間ほど放置されてしまったけれど。理事長始め理事さんたちがずいぶん気を廻してくれた宴会であった。8時終了。記念写真撮影。

 30分ほどして理事たちの部屋で二次会。各部屋に分配されていたアルコール類を持ち寄れとの指令が来る。他の部屋はすでにアルコール類もツマミもほぼ払底状態で、我々の部屋のまるまる手つかずだった分が供出されることになる。自費ではなく組合が用意したものではあるが、部屋から酒が消えるのは寂しく、何とも惜しいことである。最初に30分ほど弘南堂さんのお話を聞く(自分は日本酒を飲みながら)。かつてない激動期を迎えている古本業界の今までと現在、今後について。何かお話を、というのは前もって北天堂理事長が弘南堂さんお願いしてあったらしいが、準備されてきた「組合史」に関わるものは取りやめて、ふだん考えておられることを述べられたようだ。弘南堂さんのお話に次いで、ネット販売初期の頃の回想や、今度古本業の他に電子書籍の配信(でいいのか?)に乗り出しますという未来のありそうな話や、古本売買でどうやってあのビルが建ったのかという質問とその応えや(5分で秘訣を聞き出せる訳がないのだが)、昔からあまりにも低い古本屋の社会的地位を向上させる努力を組合全体で考えていかなければならない、などの話が有志でされ、それなりに盛り上がる。なかなか有意義な話多く、雰囲気もなごやかで、いい組合旅行になりそうである。

 二次会終わって10時前、部屋に戻ると弘南堂さんと北天堂さんが話していた。傍で自分が確保してきたビールを飲んでいるとそこへゆらりと入ってきた人があった。話が終わって北天堂さんは自室へ。弘南堂さんはベッドへ。他の三室と違い、この部屋だけはすでに照明が、洋室の壁と和室の床の間だけを残して落とされており、おやすみなさい態勢なのであって、かれこれ三十時間以上起き続けている自分ももう横になろうとしていた処であったのだが。
 少ししてようやく眠れたが、30分か1時間して廊下から聞こえてくる声に起こされた。隣の布団の中には、アタマを手で押さえながら横になっている吉成君がいた。本日の気温、4・1〜14・6℃。
 その後、部屋へ戻ってきた三浦君と焼酎水割り(なちぐろ堂大西君が差し入れてくれた焼酎)。今日は飲まないつもりが結局総量ではけっこう飲んでしまった。酒類尽き、寝ようとしたが、眠られず。吉成、三浦の両君の寝息が聞こえるばかり。吉成君はけっこう胆が太いなと感心する。