須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

土曜 引っ越し手伝い5

 午前10時45分起床。9時現在、曇り、−3・7℃ (最低−4・3、最高−0・8)、湿度44%。うどん、ナットウ、冷水、トースト1、クリームチーズ、ミニあんパン1、牛乳、カフェオレ、紅茶。正午近く出。地下鉄でススキノ。

 12時半近く、三条ビル亜本屋着。30分遅れたが予想通りまだトラックは来ていなかった。亜本屋さんは今朝、新札幌の古本市の搬入陳列もやってきたらしい。ほどなくトラックが昨日と同じ出入り口に横付けされ作業開始。作り付けの木の本棚、スチール本棚、机、茶箪笥などを次々運ぶ。木製本棚、巨大で階段をおろす時にひと苦労。一昨年のビル改築工事で階段の幅が狭くなっているので、三人で斜めに傾けたり、縦にしたりと工夫するが、腰が酷使され、腕が痛む。1時半、荷台が一杯になったのでひとまず昨日の車庫へ。

 2時着。スペースがないので外にラックのスチール板を敷き、昨日入れた本を相当量出して積み、棚を入れる。しばらくして亜本屋さんが地下鉄利用して様子見に来る。降ろし終えて三条ビルへ。亜本屋主人は地下鉄で。また店舗から棚を出し、階段降りて積んでの反復。

 終り近く、大きなモノは積み終え、歩道に出していたダンボール箱や椅子など小物を積もうとしていた時である。緑色っぽいコートを着た身なり卑しからぬ70代かと思われる男性が、亜本屋さんが湯のみ置きに使っていたガラスの引き戸のついた中二段の小さなラックを指さし、二階の人と話ついているから外側のこの入れ物だけ持ってゆく、と云う。亜本屋さんに訊いて来ようかなと一瞬思ったが、荷物を減らしたいのだろうなと解釈し、中のコーヒー茶碗や湯のみ茶碗を出してあげ、「このまま裸でいいですか、袋とかに入れなくて」と訊くと「あ、いいの、ここの上に住んでるから、これカセット入れるのに丁度いい大きさなのよ、今日はそこのキクヤさん(楽器店)さんも休みで困ってたんだけど助かった、いいのがあってよかった、よかった」とラックを持ち去った。

 すべての物の積み込み完了し、個人的に北海道画廊さんにご挨拶し、再び倉庫へ。3時半着。棚をおろして格納する。途中、茶箪笥のガラスが割れる。これは、引っ越しだというのに、亜本屋さんが箪笥の中に伝票や目録類などの紙モノなどを詰めるだけ詰めて、さらに座布団まで押し込んで重くしていたため。遅れて地下鉄で亜本屋さんが来たので、さきほどのラックのことを伝えると、「ええ!?あれは使うって断ったのになぁ」と肩を落とすので、さきほどのジジイのホラが発覚。ドサクサに紛れて貧しい古本屋から家財道具を、それも古道具屋で千円〜2千円以内で見つけれそうなモノをガメッて何が面白いのか。そんな少額に困っているような風体には見えず、むしろそこそこ豊そうな印象さえ受けたのに、自分の金を使わずに欲しい物を手に入れようとする、古本屋顔負けのそのセコイ根性とシミッタレた手管。もう人生も確実に終りに向かっているだろうに、少しは善行を積んで死を迎えようとは思わないのだろうか。思わないみたいだな、あのタイプの顔は。ああ、他人事ながら踏んだり蹴ったりだ。

 少しでもスペースを作るべく、縛ったままの本を棚に積み込む。寒風吹き寄せ、躯冷えきり、夕方近づき、今日もまた、これが古本屋の仕事なのかなあ、と暗澹、憂鬱になってくる。「後、一週間とか10日かけて、一人で片付けてゆくわ」と亜本屋さんの一言が発せられ、最後、入り切らぬ棚にブルーシートかけて紐でしばりシャッターの前に固定して作業終了。4時半となる。4千円戴く。曇天の酷寒の中、デイバックを背負ってうつむきながら氷結した坂道を上がってゆく小柄な亜本屋さんの後姿を見送る。「ガンバって下さい」と声をかけると振り返らずに手を上げた。ガンバって下さい、と云う気持が心底あるのなら、ボランティアでも手伝いに来ればいいものを、ただ言葉だけで終わらせるところが自分のなさけないところである。(と、ここに記してみせるのがさらになさけないところである。)が、正直疲れた。

 冷えきった躯を近くの大型スーパーに運び人心地つく。百円均一でシャープペン芯、ボールペン、カセットテープ2、中濃ソース、胡麻ドレ、チュウブショウガ、同ワサビ、計840円購入。南平岸へ戻り<Maxvalu>で調整牛乳、モヤシ、白鹿200mlカップ2ヶ、計402円調達。6時50分帰宅。

 18時現在、晴、−2・7℃、湿度46%。家の中が冷蔵庫。寒いのなんのって。ストーブを焚いても18度以上になかなかならず。8時〜9時、シャワー。湯奴、自家製チャーシュー、貰い物の馬肉製でないコンビーフ、和風ハム、蒸しモヤシ、燗酒二合、玄米茶。呑みながら舟を漕ぐ。11時半から午前2時まで仮眠。2時に起きビージーズ特集録音しながらウィスキー水割り一杯。今日の札幌は最高気温−4℃、凍える寒さになるでしょう、とラジオの天気予報。午前5時就寝。腕のシビレ感じつつ。あ。という間に1月が終わった。