須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

水曜 久しぶりに世間にふれる

 8時半過ぎ起床。晴。春らしきお天気。インコの世話(水取りかえのみ)。うどん、ナットウ、冷水、カフェオレ。

 9時40分家を出、マラソンで月寒A本屋さんへ向かう。歩いて25分のこの距離、一年前の自分ならば3度ぐらい休憩かわりに徒歩になれば、あとは駆け通してゆけたのだが、今回は50m走っては10メートル歩きの繰り返し。数日ぶりの外出で、体がなまっていたこともあるが、確実に体力が衰えている。いやあ、下り坂の人生は辛い。そこへゆくと比べるのもナンであるが、やはりミック・ジャガーは2時間歌いながら踊って跳んで走り廻ってぴんぴんしているのだから、ただそれだけでも偉大なのである。

 10時5分前、A本屋さん着。遅刻した訳ではなけれど、A本屋兄弟、バイト二人、運送屋さんの計5人ですでに店からの積み込みは終わっていた。自分が加わり、クルマで10分ほどの倉庫へ行って、本の入ったダンボール箱積み込み。トラックの荷台の中、運送屋さんが用意して来たローラーが威力を発揮。

 11時<Rプラザ>着。他の搬入業者のクルマが去るまで歩道で所在なく佇んでいる間、街路樹に止っている今までこちらを観察していたに相違ない鴉を観察。鴉が、あほほ〜、あほほ〜、とばさばさと道路向いのビルに飛び上がったのを目で追う。ああ、鳩も飛んでんな、スカイラインピジョンだよ、エルトン・ジョンだよ、と空を見上げていると、ビルに区切られた青空を白いものが悠然と横切って行った。あ、あれは何だ!白鳩か、いや白カラスか、それともスーパーバードか、と姿のはや見えなくなった頃に思い出した。ありゃあ、鴎だ、じゃなかったら、区別は分からんが、ウミネコだよ、お母っさん、リターン・トゥ・フォーエヴァーだよ、チック・コリアだよ、お兄さん。そう、数年前から、春から秋ぐらいまでか、海沿いの街でもないのに、札幌には鴎(またはウミネコ)が飛ぶのである。自分もこれまで何度か目撃したのである。小樽か、石狩から来る者もいるのかもしれないが、調査によると、ビルの屋上に巣を作って、ヒナまで育てたりしている奴もいるようなのだ。食料は豊平川の魚なのか、人間の出すゴミをつついているのか、いづれにしろ彼らにとって何らかのメリットがあるから飛来しているのだろう。そういえば自分の故郷、伊達紋別の実家の側でも人間の出すゴミを漁りに来ている鴎(またはウミネコ)がいたのを思い出したぞ。そして、彼ら、人間に忌み嫌われている鴉よりも、体も大きく、力もあり、喧嘩もずっと強いのだ。ゴミを漁っている鴉を追い払ってしまうのだ。ハッキリ云って鴉よりも凶暴なのだ。

 ふと思う。バードウォッチヤーいう職業があれば、もしかすると古本屋の他には何もできないと頑に信じていた自分にもできたかもしれない。そして同じ趣味のどこかの令嬢と親密になったりするのだ。そうするとまた違う人生が開けていたかもしれないのだ。そういう令嬢は鴉や鴎よりも、森林の中の可愛らしいカケスとかルリとかのトリさんをウオッチしている人の方がいいのだ。

 と、いうようなあり得たかもしれない過去を妄想しながら箱を降ろしたり積んだりしているうちに(あり得ないのは分かっているのだ、自分も。ただ、最後の妄想をしてみたい年頃なのだ、48歳の抵抗なのだ)、12時搬入終了。3時間を予定していたが、2時間で終わってしまい、入金の目算が狂う。そのままA本屋弟さんのワゴン車で月寒店へBack。店は家庭の事情があって閉店中。昼飯代かねてということで、なんと3000円が支給される。助かる。いい人だな。50円均一棚から、18冊戴く。本田顕彰「大学教授」カッパブックス・昭和31、安岡章太郎編「現代作家と文章」三省堂新書が使えるぐらいで、あとは線引き本、日焼けした旺文社文庫などの自分用。

 <Maxvalu>月寒店で買物。朝来た道を徒歩で引き返し、2時帰宅。最近外出もなく、ひさしぶりに体動かしたので、やや筋肉痛。貰った本のそうじなど。3時、シャワー。日清鶏即席麺、ナットウ、アメリカン.ソーセージなるもの、食パン二枚、冷水、カフェオレ、紅茶。

 3時現在、晴、10・7℃、今日日中最高気温12℃。

 ニュース。耐震偽装姉歯さんや篠原さんや木村さんらが逮捕さる。ヒューザーの小島さんとかはまだ。堀江貴文さんが保釈の見込みとか。保釈金3億円。料理の鉄人とかに出演していた有名伊太利亜料理シェフが大麻所持で逮捕。
 6時過ぎ、お世話になっている方から宅配便届く。<ケーニヒス・グローネ>という店の神戸アルテナ「くりくり栗のくり太郎」というケーキや阿蘭陀チーズ他いろいろ。これで栄養をつけて明日からの古本市を頑張ろうと思うのだ。
 お礼メールや、 某古本サイトへ利用代金待っててねメールや、小笠原君にこないだの宴会はどうでござったメールなどを出す。受注1件。夏目漱石虞美人草」。もちろん帙欠なれど、明治41年の初版。 
 一時間ほど仮眠の後、テレビにて睡眠と朝の目覚めと体内時計について学習。20年ぐらい人生を無駄にした、と自覚。10時、妻から定時連絡。「その時歴史が」の信長VS光秀の再放送。11時10分頃、浦河沖で地震。札幌は一瞬ぐらっと来たのみ。1時、食パン2、シシャモ、湯奴、麦茶にて第三食。

 1時台、FMで川上弘美「溺れる」ラジオドラマにしたもの。どうしても登場人物が出演の中村メイコの顔になってしまうのだ。4時半就寝。断酒。