須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

水曜 魔群の通過

 7時15分起床。うどん、ナットウ、冷水、カフェオレ、緑茶にて第一食。8時25分、家を出る。35分、南平岸駅前で萌黄さんのクルマに拾われる。道中、人間という生き物の身勝手さについてグチを聞いてもらう。9時、頓宮神社着。

 萌黄さんから、グラシン紙30枚頼んでおいたのだが、今回はプレゼントしていただく。ありがたし。持参したみかんをお裾分け。じゃんくさんから北海道新聞3月12日分(村井紀先生の文章掲載号)他の古新聞紙10部ばかりもらう。インコ用。ありがたし。持参したみかんをお裾分け。会計理事の◯◯さんより「スガさん、組合費は?」と訊かれ1万円払うが、「残りの4千円はいつ?」と追求はやまない。「来月払います」と答える。理事は無給でのボランティアなので、ほんとうに煩わしいのは分かるし、ご苦労様と云いたいけれども、こちらも苦しいのだ。

 相談を受けていた三島由紀夫福永武彦、の本が最終台と二回目開札に並んでいる他は閑散としていたが、10時半にはけっこう埋まった。店を一時辞めていたと聞いていた旭川の◎◎書店の息子さんが復活、しばらくぶりに顔を見る。元気そう。1階のテレビでWBC日本ーメキシコ戦を10分ほど見て、また2階へ。時々何回かセカンズさんにより経過報告が入る。◯◯書房はふだんは来ない専務のHさんも来場して入札、えらく気合いが入っている。次第に来場者が増えてくるに従って、最終台の周り人が集まり、札幌では珍しい文学書の一口ものを、手にとってみなさん熱心に見て、あらためている。出品品目はざっとこんなところ。

1. 三島由紀夫全集 全36巻 新潮社 S48頃限定1,000部/2. 三島由紀夫選集 全20巻 新潮社 S33頃 (蔵書印)
/3. サーカス 1966(3〜19三島由紀夫)/4. 岬にての物語 S43 豪華限定300部/5. 美徳のよろめき 1957 限定500部 署名入り/6. にっぽん製 S28/7. 魔群の通過 S24/8. ラディゲの死 S30/9. 夜の向日葵 S28
/10. 近代能楽集 S31/11. 仮面の告白 S24/12. 夜の支度 S23/13. 怪物 S25/14. 狩と獲物 S26/15. 青の時代 S25/16. 愛の渇き S25/17. 戀の都 S29/18. 真夏の死 S28/19. お嬢さん S35/20. 限定版 死の島 S48(20〜26福永武彦)/21. 特装限定版 絵のある本 S57/22. 特別限定版(肉筆署名入) 海からの聲 S49/23. 限定 夢の輪 S56/24. 限定B版 夢百首雜百首 S52/25. 限定 夢みる少年の晝と夜 S54/26. 福永武彦全小説 全11巻 S48

他にも三島由紀夫福永武彦本が多数出品されている。「魔群の通過」はもちろん帯なし本だ。帯があったら組合史に残る歴史的なセリになるところだ。ラディゲは帯付美本、真夏もキレイだ。

 今日は第二回の発声を担当。12時過ぎ、最終改札。ボーはわずかに全集の2点のみ。福永さんのよく見かける限定本を除けば、地方のセリにしてはケッコウな値段になった。「魔群の通過」は自分から見れば売値のような値段で落ちていた。Jさんに委託したお客さんも大満足だろう。10年前であったら全然落札値がちがっていたに違いない、そもそも入札者の数もどれだけいたことか。昔は市内で文学書を扱う店自体4、5店であったのだから。誰でも安易に相場の検索ができるようになった時代なので、事前に案内された出品リストがとても有効に働いたらしい。あまり文学書に明るくはないみなさんも十分に下調べをして、準備の後、今日の市に臨め、札が噛み合う結果となったのだ。自分はお客さんに頼まれていた福永本3冊を落札。自店用にも欲しい本、他に何点もあり、こんなうぶ口は札幌ではもう出ないだろうが、致し方なし。Jさんからお礼のワインとお金1万円もらう。お金の方はまったく宛にしていなかったので驚き。実に嬉しい。J氏への私的評価がぐっと上がる。

 1時半、神社出。近くの大衆酒場<もっきりセンター>の場所を確認。いつか来よう。地下街の<紀伊国屋>に寄る。『抒情文芸』春季号に自分の詩「父」が入選。清水さんの全体への講評は、詩の切れ味、音楽で云う転調の妙、ドキッとする1行について。某流行作家のインタビュー。メルヴィルの「白鯨」は彼の作よりも劣るととれるような発言をしている。売れているというのはスゴイもんだ。

 南平岸Maxvalu>で米ホシノユメ5キロ1440円を購い、米袋ぶら下げて郵便局に寄り、「昨日、90円切手買ったんですけど落ちてませんでしたよね?」と質問し、探索の努力虚しく90円切手をまた一枚買って帰宅。2時半。カフェオレ。2時間ほど本の整理など。トースト2、みかん5、紅茶にて第二食。お客さんの伊藤君とメールやりとり。金曜正午、京王プラザホテルにて会って、落札していた福永本を手渡すことに。昼食を御馳走して下さる由。

 12時半、シャワー。日高産オスシシャモ、トリ肉の酒蒸し、厚揚げ焼き、サラミソーセージ、モヤシサラダ、醤油味のトリ汁。と、某氏により品数の割にはあまり食欲をそそらないと評された我が家のメニューで日本酒2合、水割り数杯。2時、ETV、リービ英雄。手塚「ユニコ」読む。その後1時間仮眠の後テレビ、カフカ。朝の9時就寝。