須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

人生が過ぎてゆく

 午前2時前目覚め、3時起床。顔を洗っているところへ居間から地響き。妻の本が崩れていた。文庫本、単行本、合わせて二百冊ほどが床にちらばっていた。微妙に保たれていたバランスが、昨夜抜き取った一冊のために維持できなくなったらしい。

 3時現在、晴、−4・3℃、西北西の風2m/s、湿度75%。今日の予報、晴時々曇り。生卵、ナットー、アメリカンソーセージ、米飯、みそ汁、麦茶、紅茶、りんごにて第一食。日記付け。7時半、トースト2、ミニあんパン1、紅茶、カフェ・オ・レ、冷水で第二食。

 8時15分出発。走って南平岸駅、8時45分sub札幌駅着、小走りでバスの発着所へ。道南バスチケット売場へ行くと新たな事実が判明し、キビシい現実に直面。9時20分発(てっきり9時発と自分は勘違いしていた)では喜茂別でのバス接続に支障があり、8時の始発に乗車しなければ日帰りでの大滝往復は不可能であるのが売場係の女性の説明で判ったのである。夏場なら札幌駅から乗る洞爺湖温泉行きが喜茂別に11時6分着、大滝へは11時16分の伊達行きに乗り継げば良いのだが、冬季には15分から30分以上もの遅れが確実に出るため、9時20分札幌発に乗車して11時16分喜茂別発の伊達行きへ乗り継ぐのは不可能なのである。昨年二度利用したのでこれは知っていた筈なのであるが、8時発ではなく9時発と自分の都合のいいように記憶が替えられていたらしい。振り返れば似たような失敗が今年二回はあった筈で、こうやって自分の人生は過ぎてゆくのだなあ、とあらためて思う。

 大滝行きは数日延期。10時までベンチに座り、あるいはエスタ地下街を散策して過ごす。ベンチで隣のオジさん(って自分もそうなのだが)が読んでいるスポーツ新聞一面が見え、仰木彬オリックス監督の死を知る。体調良くないとは聞いていたが驚く。今年無理やりにチームを任されて命すり減らしたなぁ、という感あり。

 10時、ビックカメラが開くのを待って所用済ませ、JRタワー旭屋書店へ。各社出版案内など、ご自由にお持ち下さい、とあり、ご自由にバックに入れる。1時間ほどいて店を出、エスカレーターで降りると、先ほどから自分の周りをうろうろしていたナイキのマークの入ったウィンドブレイカー(?)を着た六十代の親爺が後ろに。あら、ひょっとして、とある疑念が浮かんだ。途中の階で降りてサングラス売場など見ているふりをしていると、件の親爺も近くに。もうまちがいない。「何か私に用ですか?」と話かけようとしたが、自分の想像とはまた違うタイプの職業のお人かもしれないので、またエスカレーターで旭屋へ上がり、カウンターへ行ってバックの中を見せ、「ここにあったモノをさっき戴いたんですけどよかったですか?いや、あのオジさんがずっと私の後をつけて来るので、疑われてるんじゃないかと思いまして」と女性店員さんに説明し事なきを得た。親爺はにやにや笑っており、なんか不気味。
  それから徒歩で大通、<リーブルなにわ>で立ち読み。『群像』の野間文芸新人賞選評、何かと面白し。狸小路名取川靴店で冬靴を調達2070円、<富士メガネ>で調整をした後、久方ぶりにI書店へ寄る。一階のみ眺めて帰ろうと思っていたのだが、昼食に行く店員さんの代わりに一階レジに付いたIさんに見つかる。主にネット販売について話していると、本州から来たのだが二階の山岳書は見られないかというお客さんがあり、何度も催促するので、「私が一階見てましょうか?」と自分が口を出すと、Iさんは地下売場に電話して奥様を呼び1Fレジを任せて、三人で二階へ。15分程もいたろうか、山岳書のお客さん、結局何も買わず下に降りて行った。自分だったら、客が一階に降りた頃を見計らって、「ふん!」などとやるのであるが、大人のI主人は気にせずに作業されていた。カンコーヒーを御馳走になり、一時間近く話をし、文字通りお邪魔をして、「何も買わないですみません」と挨拶して辞す。「いや、ウチは札幌一高い店ですから」と応えられたが、もちろんそれは冗談で、欲しい本はたくさんあるのだが、この年の瀬を考えるとどうも......なのであって、つまるところ自分も先ほどのお客と同じ「ふん!」な奴なのであった。

 3時半帰宅。妻が呆れる。弁当として作ってもらったお握りを麦茶で食う。<日本>から受注一件。窪田般彌詩集「夢の裂け目」。

 8時半仮眠のため床に就く。予報では明日の天気が悪いので、10時前に起きて灯油を買いに行くつもりであったが、目覚まし止め、入浴も中止して、眠り続ける。断酒。