須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

母恋の思い出

 11時半、電話で起こされる。A本屋さんから。依託で出品させて貰っている<日本の古本屋>よりアプダイク「カップルズ」全2冊の注文。顔をざっと洗い、本を探す。30分かかる。連絡してやってくれと教えられた電話番号にかけると、注文者はおじいさん。ついこちらの話し声も大きくなる。振替口座を教える。改めて見直しましたら、あまりいい状態ではないので、端数の1230円値引きしますからと断わって、了承を得ておく。このサービスはお客への親切心からではなく、一旦送った本の返品をできるだけ回避しようという配慮からである。

 晴。あたたか。牛乳、紅茶、冷水で第一食(?)を摂取しながら、メールチェック。オースティン「マンスフィールド・パーク」を送本したお客から感謝メール。やはり女性は対応こまやかなり。数分のためらいの後、『詩学』へメール送ってみる。「9月号出てますでしょうか?」必ずしも買うというわけじゃないんですけど。

 ラジオからのニュースによると室蘭市の母恋(ぼこい)郵便局で昨日約1500万円が強奪された由。母恋と云えば、わが高校時代の友人内田君の実家が一時この地区にあった。遊びに行った折、家では飲み足らず赤提灯の巷へと繰り出し(高卒後の話よ)、現在はムロラン焼き鳥と称して名物にしようと地域ぐるみで画策している、だからナンなの?何処がオリジナルなの?と云いたくなる豚肉・タマネギ・和芥子のみの焼き鳥を食ったことがある。それともうひとつ、室蘭の有線放送で働いていた頃、憂鬱な思いを抱えて、何度か営業のために歩き回ったのを思い出す。当時衰退しつつあった室蘭の中においても、特に何かこれといって目立つもののない、寂しい場所であったが、今はどうなっていることか。いずれにしろ田舎でのこの手の犯罪はすぐ足がつくものだ。犯人は身長160cmぐらいで土地勘のある者、犯行時間は午後4時45分頃。「ぴったりやんけ」と妻がこちらを見るが、冗談じゃない。自分にはアリバイがある。筈だ。たしか。

 15時現在、晴、26・2℃、湿度45%、風のない残暑。

 <楽天>からクルティウス「フランス文化論」みすず書房に注文。カバー付だが小痛なので800円。安いなあ〜。封書で<東京古典会特選市目録抄>届く。へぇ〜、萩原家旧蔵肉筆もの・著作類一括なんていうのが出ているじゃないの。色紙、短冊、ほぉ、詩稿「乃木坂倶楽部アパートメント」冒頭一枚、草稿「日本の巡査」400字17枚、ほぉほぉ、白秋、達治の短冊に、おお、これはスゴイ!犀星「愛の詩集」朔太郎宛献呈本。金が欲しいなあ。

 5時、うどん、トースト、紅茶、冷水にて第二食。7時から10時、大仮眠。NHK「秘太刀馬の骨」聞き逃す。帰宅した妻と支払いの金の話。シャワー。第三食。

 朝方4時に横になり読書少々。高岡淳四詩集「おやじは山をくだれるか?」。同人誌『妃』の仲間で山友達でもあるらしい田中庸介の「山が見える日に、」と同じ思潮社から同じ1999年の10月30日に発行、装画も同じ沢野ひとしの似たような絵柄、表紙のブルーの色合いがかすかに違うだけという、いわば兄弟詩集。内容も似ているが高岡の方がずっと意味は取りやすい。なかなか面白いけれど、人生も秋の半ばのオヤジには、ちょっと幸福すぎるんじゃないの?と思わざるを得んというところ。ただ、収録作品は88年から92年に発表されたものなのだから、もう4、5年早く出せば良かったのに、と他人事ながら考える。きっとあまりガツガツしていない人たちなのだろう。

 7時就寝。今日からまた断酒の日々。