須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

お呼びでない?

 1時半起床。

 Easyseekから注文一点あり。ハヤカワ文庫「ファントマの逆襲」昭和53年・1800円。妻の蔵書。

 クルマの免許更新に行く予定であったが、すでに間に合わない時間なので明日に延期する。こうやって自分の人生は過ぎてゆくのだなあ、道草ばかりで。と、思う。                             
 道草といえば、昨年、大通りRストアの古本市でA本屋さんのアルバイトとして店番をした折、平台の中から志水辰夫エッセイ集「道草ばかりしてきた」をタイトルにひかれて拾い読みしたところ、この作家が数年前から札幌に住んでいるのを知った。作品上ではともかく、もともと誰か係累か知り合いがいたというわけでもなく、実生活では縁もゆかりもない土地であったらしい。札幌在住の作家というと、原田康子、小檜山博、藤堂志津子東直己などけっこういらっしゃるが、それぞれの発行部数は知らねど、その中ではこの人、寡作ではあるが、シミタツと呼ばれて熱狂的なファンが多いという点では最もメジャーな存在かもしれぬ。日本のハードボイルド作家といわれる人たちがよく、書斎でモデルガンやライフルを自慢げに構えてみせるところとか、ホテルのバーかなんぞで、麻の白いスーツにパナマ帽(っていうの?)にサングラスというイデタチで、シャンペン・グラス片手に葉巻を吹かしているなんていう写真を雑誌のグラビアで見かけるけれど、なんか違うんじゃないのって感じで、そうした方々の作品をどうも読む気になれなかったのであるが、「道草」はこの作家の小説なら読んだみたいと思わせるエッセイであった。
 昨年末パソコンを知人から恵んでもらい、1月にネット開通、少しでも社会参加して自分も現代文明に追いつくべかと、あちらこちらのサイトをストーカーして歩いている。志水氏のHPを見ると、北海道神宮の近辺にお住まいがあるようなのであるが、そろそろ東京へ戻るか、札幌で永住の覚悟を決めるか、それとも別の新しい土地へ移るかの決断を決めかねているご様子。ご本人は次の土地に一番魅力を感じているが、札幌でようやく親しい友人のできた奥方が、新しい土地ではまた交流ゼロから始めなければならないと思うと、たじろがざるを得ないという。シブイぜ。モロシブですぜ、兄貴!なんてかっこいいんだ!セリ場で意中の本を見つけても、支払い考えると入札にたじろぐとか、おかしくなった備付けストーブについて大家に訴えるのをたじろぐとかではなくて、こういう<たじろぎ>なら自分も感じてみたいもんである。一方、志水氏の方は、札幌に5年住んでいながら友だち一人できていないと書かれている。こんなんでどうでしょう?もしもよろしければ、私がその一人になって差し上げましょうか、と近々ひょっこり訪ねて行ってみようか。が、どうだろう、あちらにも選ぶ権利があるからね、やっぱり。おそらく、友だちができないのではなく、強いて作りたいとは願っていないのだろうからして。

 志水宅はしばらくとりやめ、明日こそ免許更新だ。
リミットは3月14日。