須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

日曜 組合史座談会1

 午後12時45分起床。トースト1、牛乳、冷水にて第一食。地下鉄で北24条。

 2時に5分遅れて、昔、たしか結婚披露宴などという恥ずかしいことをした覚えのある〈ホテル サンプラザ〉は松の間着。『札幌古書組合史』用の座談会に見学者として出席。座談会メンバーは弘南堂、北海堂、大学堂、並樹書店、石川書店の5店のご主人、それに編集委員の市英堂、弘南堂庄一氏、南陽堂、サッポロ堂の4人、加えて専務理事の石丸書店、見学傍聴者の書肆吉成と須雅屋。途中、コーヒーとケーキが出たが休憩なしに5時まで一息に。遥か、あるいは相当昔のこととはいえ、具体的な売り上げ、仕入れ値、売値の数字なども語られオモシロイ。これは『組合史』の出来上がりが愉しみだ。なかでも某さんの、漫画だけで当時ずっと一日5、6万売ってたから、という一言が、やっぱりそれぐらい売れてたんだなぁ、とは思いつつも、それじゃあ店全体でひと月では、一年では、それにデパート展や他の外販もやってたし、と考えると、今更ながら、ほお〜、と仰ぎ見る感じ。

 終了後、1階レストランにて会食。用があって帰られた並樹さん、北海堂さんを除いて。自分も、原稿書きのため早く帰宅しなければいけない、と思ってはいたのだが、食費の節約にもなるし、ご飯を食べるだけなら1時間で済むだろうし(と安楽な方向への都合よき理由考え)、それにつまりは「ほいと」なのであって、席に着くことに。自分は刺身(三種少量)、うどん、もう一品とご飯のついた定食にビール中ジョッキ1杯。庄一氏はハンバーグステーキ、秀了氏はカツレツの鉄板焼きみたいなものを頼んでいた。弘南堂オヤジさんが座談会の続きのように、昔の仕入れや、若かりし頃の東京の市場、岩内から札幌の市場に出た大口の話などを続々。急ぎの用がなければ、ずっと聞いていたいぐらいである。東京の市場で落札した荷を札幌に送るのに、薬屋さんや八百屋さんに出向いて木箱を分けてもらったものだと云う(自分の記憶に誤りなければ)。

 食事終わってホールに出た処で、「ちょっと一杯ゆこう、吉成くんも一緒に」と市英堂さんから声がかかる。今日はこうなる予感もあったのであり、そうなった時は辞退しよう、と心に決めて来たので、「すみません。ちょっと帰らねばならない用があるので」といったんお断りした処、「ふうん」と詰まらなさそうな、寂しそうな顔をするので、まあ一時間ぐらいならどうということもないだろう、帰宅後すぐに寝て起きてという手もあるし(と歓楽の境界への都合よき理由考え)、じゃ、かる〜く、ちょっと行ってみますか(と、まるでオノレが主催するがごとき口ぶりで)、ふらふらと付き従い、近くの〈和民〉へ。刺身、漬物、焼鳥ほか諸々を頼み、ビールのジョッキ一杯、あとは燗酒を始めはちびちび、次第にくいくいと。吉成君はビールのみ。市英さんから、実は、と改まって話が切り出され、製作が予定されている『札幌古書組合史』の昭和五十年以後の執筆を依頼される。しばしの逡巡があったが、引き受けることにした。報酬も若干出るらしいが、なんと云っても、弘南堂さん、市英堂さんにはいろいろお世話になりっぱなしなので。ただ、自分なりに予定している書き物に手が廻るだろうか、という懸念もチョッコラあるのだが。ところで、この店ではオーダーを取る時、「かんざけ」と頼んでも、「ああ、かんしゅですね」、と必ず云い直されるようだ。これは日本全国津々浦々の〈和民〉でもそうなのだろうか、調査したい処である。友人と待ち合わせがあるとのことで吉成君は7時で退席。それから市英さんの息子さんの栄達のさまを聞く(吉成君がいる時に、すべてが上手く行って終わる人生はない、仕事が順調だと例えば健康や家族、親兄弟に問題が起きて来たりする、という、これも昔、市英さんから聞いた話を吉成君に披露し、それはまったくホントウだと最近つくづく思うのだよ、と実感を述べ、そこから敷衍して、現代日本社会における子育ての難しさについて自分が話した流れだったのだが)。令息イチヨ君は現在、若干27歳(?)にして某有名IT企業系列会社の社長さんだそうだ。二十年ほど前になるか当時北21条にあった須雅屋に入ってくるや、「ウチの店の方ずっとが大きいぞ!」と一声叫んで走り去った、あの小憎らしくも可愛らしかったガキが、もとい、ワラベが、いや、お子様が早くもそんな社会的地位にいるとはなぁ。

 9時半過ぎ〈和民〉を出、二次会の店を探索すべく北二十四条歓楽外をオジさん二人でしばし逍遥。早く家へ帰らねば、という殊勝な気持はすでに失せていたワタクシ。市英ビル斜向いの第五タイガービル2F〈うたごえVoice Hiromi〉に入る。ふだんサックスやギターなんかの演奏もやっている店らしいが他に客なし。HARPER水割りにカラオケ。店のママがヴォーカルで『Meditation 〜瞑想〜』なるタイトルのCDを出していると知り、「ご存知かもしれませんが尾崎亜美の最初のアルバムの題名が同じく『瞑想』でしたね」と云うと、「あらぁ、ホント?どうして知ってるの?」と即座にメモしていた。札幌に引っ越す前に千歳の新古書店に蔵書千数百冊を売ったが6万いくらにしかならなかった、と後悔しているようなので、「新古書店で6万なら高い方じゃないですか、けっこういい本があったんじゃないかな」とコメントしてみる。途中から「先生」と呼ばれる人が入ってきて、ギターをつま弾きながら飲み、古本屋二人の歌を持ち上げてくれる。二軒とも市英さんに御馳走になり地下鉄最終で南平岸へ。1時前帰宅。本日の気温10・3〜19・2℃。1時半就寝。