須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

水曜 梱包ブルース

 7時15分起床。うどん、ナットウ、冷水、ミニあんパン、カフェオレ。8時30分出。雪。積雪、弁慶の泣き所ぐらいまであり。

 9時過ぎ、頓宮神社着。すでに雪の中、事業部員とセカンズ理事がお集り。例によっての例の小樽の口の仕分け。先月分金券13210円、古書組合費2千円払う。残る未払い1万円なり。来月中になんとか片をつけたいもんだ。本日なかなかセリ場に姿を現さない薫風書林を心配して、並樹さん、萌黄さんが、どこか躯が悪いのでは、と自分に訊いてくる。「いや〜、大丈夫でしょ。這ってでも来ますよ」と答えながら、幸せなヤツ、スガが札幌組合から姿を消しても半年ぐらいは誰も気づかないだろうに、と思う。

 萌黄さんから、昨日北尾トロさんがに来店されたと聞く。「あの人はいい人ですよ、きっと。猫に優しい人だから。ま、ヤクザとかでも人間には残酷だけど犬猫にはやさしいのもいるから一概には云えませんがね」と反応して笑われる。「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」という本をモノしたお方なのだから、他人の鼻の穴が見易い小柄な人かと漠然と想像していたイメージと違い、自分より10センチほど高い萌黄さんよりもさらに長身の由。その文章からしてカラッと爽やかな好漢の印象があるのであって、お会いできなかったのは残念なり。

 11時15分から第一回開札。いつものように自分は発声。12時15分で開札終了。海野十三の本が紛れている口があり札を投じたが落札できず。困るのである、ヘンなとこに入れて組まれる(縛られる)と。貧乏人の商売アガッタリなのよ。

 掃除機掛けをし、後片付け終えて、1時半神社を後に。運転手の文教堂恊治君が所用のため今日は一人で帰る。<紀伊國屋>で「抒情文芸」「群像」「文学界」立読み。<小鳥の広場>、4月1日まで改装中の由でインコさんたちは見られず。ちと寂しい。

 地下鉄南平岸駅下車。道路向かいの<Maxvalu>で酒を買いたしと思えどもカネもなく、生活変革を成し遂げんため、誘惑をふりきり雪の中を自宅に向かう。雪が融けて道に水たまりができ歩きづらいこと。途中さきほどセリ場で別れた薫風書林に出くわす。てっきり北大前の店に出勤したとばかり思っていたのに自宅へ戻っていたらしい。潜伏して何をやっておったものやら。神出鬼没というか面妖な。

 2時半帰宅。12時現在、雪、0・4℃、最高気温2℃。牛乳、カフェオレ、トースト、冷水。一昨日UPした福永武彦昭和31年初版売価800円の本に問い合わせ。まわりのお店が5千とか8千とか1万2千とかの価格で出品しているもんだから喜び勇んでFAXしてきたのだろうけど。ネットにも掲載してある状態詳細を紙に書いて返信。気持は分かるけど、お客さん、その値段で美本ならオレが注文しちゃいますよ。

 梱包1、発送4。♪今日のぉ〜梱包はスゴかったぁ〜、あ〜とはぁ〜焼酎をあおるだけぇ〜。が、その焼酎もビールもウィスキーも清酒テキーラもマッカリもウォトカも老酒も泡盛もないのである、この家には。酒がないのは、まっこと残念なのだが、それはともかく、その大仕事の概要を聞いてたもれ。まずですな、本をビニール袋に入れ、んでもってそれをプチプチで二重にくるんで、そいつをワインかなんかの堅牢なダンボール箱に詰め、そのスカスカ部分を丸めた新聞紙パッキンで埋め、その上から新聞紙で包装し、最後に巻きダンで梱包してビニール紐で縛り、ワレモノのシールを貼って完成させたのですよ、おいちゃんは。くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、厳重に梱包してくれろ、とお客さんより昨日から三度も注意を促すメールが来たもんで、実に丁寧、と自負している常にも増して完璧、チョーねんごろなる梱包をし、こいつは我ながらオレの梱包芸術の一頂点なのではと思える傑作を造り上げたのである。どうでぇ、文句あっか。でも酒がないけどさ。♪今日のぉ〜、梱包はスゴかったぁ〜、あ〜とはぁ〜・・・酒のない黄昏にひとりエンドレスで歌う岡林須賀康である。しかし、金子國義の本を買う客って繊細っていうかぁ〜、状態に過度にウルサい人が多いみたいなのよねぇ〜。

 鈴木ヒロミツが肝臓ガンで亡くなった。60歳。アカの他人だがこれは驚いた。

 9時半、ブタ角煮、蛸入イカすり身揚げ、五目豆腐揚げ、モヤシとワカメのサラダ、ワカメみそ汁、米飯、緑茶、チョコレート。午後11時前、就寝。断酒。