須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

水曜 FOURPLAYの夜

 10時。2Fガキの暴れる音で目が覚める。二人いるうち、休みが終わった上が学校に行っても、下が走り廻れる躯に成長してしまったのだ。隣室のギャオスガキも。ああ、恐ろし。

 寝床読書。夫馬基彦「恋の呼び出し、恋離れ」(1995年/中央公論社)。いやあ、エロチックでちょっとコーフンしてしまったなあ。恋愛を主題にした連句小説の由だが一種の幻想小説とも云いうるみごとな短篇集。

 二度寝して4時起床。15時現在、雪、−1・8℃、湿度69%、日中最高気温0℃。ロールパン、ミニあんパン、カフェオレ、紅茶、冷水。

 6時45分家を出、地下鉄で中島公園へ。7時10分、<ZEPPSAPPORO>着。半からFOURPLAYのコンサート。初めて入ったが、やはりステージ上の表情が見える距離で体験するライブはいい。自分が知ってる四半世紀前のラリー・カールトンと云えば長髪なびかせて颯爽青年というイメージであったのだが(あくまで雑誌の写真で)、今では頭でライトを反射させまくりながらギターを弾くオジサンに。E・クラプトンさん楽団の一員も兼ねている由のベースのイーストさんの器用さには目をみはる。びんびんファンキーなリズムは刻むわ、ジャコ・パストリアスばりのリード・ベースというべき弾き方はするわ、に加えてこの人、スキャット・ボーカルと口笛が上手いのだ。特にボブ・ジェームスのピアノと掛け合いを演じる口笛の自由自在さは、これだけで御飯が食べられるほどの巧みさだ。皆さんが皆さんとても大変なテクニシャンであるのは端から分かってはいるのだが、始まって20分ぐらいでやった蝋人形館PLAYにはタマゲタ。と申しても、縄と鞭、蝋がたらたら、のプレイではないのであって、ガンガン盛り上がっていたナンバーの途中で演奏が止るのだ。と云っても、3秒、5秒とチョットダケヨと止めてまた再開するのなら、そんじょそこらのバンドもよくやるパターンなのであるが、この方たちのこのプレイは演奏の途中で、ピアノもドラムもギターもベースもストップ前の状態で腕を振り上げたり、振り下ろしたりしたままの静止した姿で、しかも眉ひとつ微動だにせず、遠目には呼吸も止めているが如き完全な蝋人形状態になって、30秒からもしかすると1分近くは経過して客席がザワメキ始めた頃に、お互いを視界に入れていた位置関係にあった訳でもないストップモーションの4人がいきなり蘇生すると同時に演奏再開、止った瞬間の即後に一糸乱れず接続、バンドして機能、またバンバン盛り上げてゆくというもの。と長々と書いたが、つまりバンドが自発的に演奏ストップまた再開というふうには見えず、まるで誰かに魔法をかけられたように時間が止ったが如くに静止、しばらくして魔法がとけたように何もなかったの如くに動き出したように見えた、演出されていた訳で、奥様は魔女PLAYと別名を献呈したい離れ業なのだ。これは相当の技術の方々がそれなりのお稽古を積んでいなければできない芸当であって、やっぱりプロってのは客を楽しませてくれるものだな(「楽しい」の中身には人によっっていろいろあるだろうが)。アンコールが終わったところでメンバーが前列の握手を求める客たちに応えていたが、カールトンだけは握手には何か苦い思い出があるのか、タッチで済ませていた。

 一人サミシク帰途に着かんとしていたところに『札幌人』の荒井さんから声をかけられ<焼鳥じゃんぼ>へ寄って御馳走になる展開に。荒井さんはビール、自分は燗酒二合。お互いかつかつでんな、今年あたりは気張りましょうや、なぁんて話をひとしきりしていたところへまた男女四人連れが狭い店内へなだれ込んで来、よく見るとその一団の中にかねて知ってる中野朗さんと杉村悦郎さんが。やあやあ、昨夏の<Rプラザ>古本市以来だね、まだ生きていたんだねぇ、と珍しがられ、さきほど萌黄書店さんで買って来たばかりという高城高「X橋付近」(荒蝦夷刊)を見せてくれる(さっぽろ萌黄書店さんではサイン本を販売中 http://www.d2.dion.ne.jp/%7Emoegi/)。

 明日の朝9時までにアゲねばならない原稿がある由の荒井さんが帰った後はそちらの卓の焼酎を手伝う。お湯割りである。中野・杉村二人組から、最近のスガヤのブログはつまらん、毎日更新しないのは読者に失礼だ、などと有り難いご意見を頂く。杉村さんが、あの方のブログまで!と思えるほどに幅広く覗いており、ブログ界に精通しているのが判明。2月中旬にネット古書店真駒内石山堂>がいよいよオープンの由。サイト担当の永井青年、柏艪舎の飛田さんに紹介される。<じゃんぼ>のマスター三宅さんから先日来店時にタクシー代として2千円お借りしていたことを知り返却、すっかり忘却していたのであって恥ずかしい思いをすると共に手痛い出費となる。若者二人とススキノ駅で別れて地下鉄で澄川へ。意志の固い杉村さんを車内に残して中野さんに誘われるままに澄川で降り、いつのまにやら出来ていた室蘭焼鳥の店<黄金の串>へ。60年代70年代の話を聞く。焼酎水割りを何杯か飲み、出て来たヤキトリなどのツマミの95%を平らげ、支払いの100%を中野さんにお任せし、タクシーで自宅まで送らる。

 2時過ぎ帰宅。燗酒一合。6時就寝。