須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

火曜 (一応)結婚生活も送ってきた

 午前7時半目覚め、8時半起床。9時現在、晴、20・2℃、湿度55%、最高気温23℃の予報。食パン2、プロセスチーズ、ミニあんパン1、牛乳、カフェオレ、紅茶、冷水。窓開けてると寒いぐらいになってきた。
 古本入力。すぐ飽きてネットでブログ「小笠原劇場」など読み、ふはははははは、とインコがきょとんとこちらを見ている部屋の中で笑いこけ、あ、こんなことをしている場合ではないとまた入力に戻り、ちょっと打ち込んでは、寒いので暖かいものを摂取して暖をとろうと、例によりてうどんとナットウを食し、冷水を飲み、ホット・コーヒーなどを啜って、眠気を催してみる。
 釧路S堂さんよりメール。昨日未明にある件でメールを送ったのであるが、返事がないので、無視されているのかな、あの人も自分と関わりになりたくないのだろうな、無理もない、と諦めていたところに返信。昨日は鼻炎で飲んだ薬の副作用で一日中臥せっていた由。もう随分と久しい以前から、自分の案内でいつか、ススキノのオカマバー、ホモバー、ゲイバー(どう違うのだ?)のハシゴをしようとの計画があったのだが、その約束はいまだ果たせていない。こう書くと、あたかも自分がその手の店の事情通のようであるが、そんなことは決してないのである。そういう趣味はないのである。自分はちゃんと女性と(一応)結婚生活も送ってきたし、現に今も送っているのだ。と声を大にして云ってみる。だが、釈明すればするほどグレイからブラックへと疑いが深まってゆくものなのであるよ、こういうことは。
 4時、区役所へ某サイトから提出せよと指令されている住民票を取りにゆく。350円。小雨の中を帰ってくる。切手も買う。80円。金がかかるこっちゃ。
 Yから読めとまわって来た吾妻ひでお失踪日記」読了。観察力、記憶力、構成力、笑いと批評。傑作なり。そしてプロだから当り前だが絵も上手いのだ。ガス工事の工具類、工事現場や公園や街の風景、肉体労働している人体、寝転がっている人体、座ったり走ったり嘔吐したりしている人体、などすべてが質感を持って、単純かつ的確に描かれている。
 ホームレス生活、アル中入院生活の話ももちろんスゴイのだが、ガス配管会社で労働した話がこの本に幅と深みをもたらしているように思う。自分も電設や水道配管の仕事をちょっとだけやった経験があるが、ああいう職場の人間関係が実によく描かれている。竹を割ったような性格の爽やかな人間など、まずいないものだ。それから、ホームレス生活は、ちょっと自分にはできない、とあらためて痛感す。神経が衛生面で耐えられないだろうから。
 ただこれ、全部実話の由であるが、この作品で見る限り、創作上の悩みとかアル中から来る妄想の苦痛とかいろいろ理由はあったろうが、最後の最後の崖っぷちまで追いつめられての失踪ではない。長期に渡る覚悟の計画性はなく(そんなモノある方がオカシイかもしれんが)、発作的な蒸発であり、成り行きの下降生活である。であるからあまり遠くまでは逃げていないようだし、すぐに見つかってしまう。自宅には家族が生活してゆけるだけの蓄えがあっての(残しての)家出であり、であるが故に、家族も憎悪したりせずに、見切りをつけることもなく、捜索願いを出しているわけだ。つまり帰れる場所、戻れば受けとめてくれる家族がいての失踪、余裕のある失踪なのだ。それだけファンや出版社や家族、すなわち世間というか他者に必要とされる才能があるということだ。仮にこの自分、須賀章雅が蒸発したらどうなるか。家族(妻とインコ一羽)は、あの馬鹿が、と蔑み憎悪するかまたは、ああ、せいせいした、と万歳するか、数少ない友人知人たちはと云うと、ま、あの人だったら仕方ない、付き合っていても特にメリットあるわけじゃないし、と見切りつけられて捜索願いも出されず、家族(妻とインコ一羽)からも友人からも、やがて忘れ去られてゆくだけなのだ。ああ、インコの蘭丸と妻が万歳している様が脳裏に浮かんで離れない。また、アル中になるにもそれなりの金と体力がいるのだなあ、と思ったことだ。こんなに朝から夜中まで四六時中飲み続けるに足る大量の酒を現在の自分にはとても調達できないし、飲み続ける体力(?)も持ち合わせていない。それにしても吾妻ひでお、しぶといというか逞しい。漫画の才能だけでなく生きる才能があるのである。
 9時前から入浴。ホッケ、ブタ肉と玉葱炒め、卵焼き、梅干し、米飯、浅蜊みそ汁。調理の途中で(自分がやっていたわけではないが)電子レンジが作動しなくなる。スイッチが入らず、ウンともスンとも云わなくなりやがったのだ。ああ、また金がかかるのか、と思うと不快になる。「最近、我が家の中、立て続けじゃない?」とY。我が家に貰われてきて(某氏宅→薫風宅→須賀宅と遍歴流転してきた)15年、おそらくその前は某氏宅で20年ぐらい(薫風宅には滞在していただけで使用されていない)、合計35年ぐらいは働かされたであろう「BROTHER調宝さん400」君よ!(恐ろしく巨大で旧式、何しろ中に回転する置き皿もないのだ、電子レンジが日本の市場に出現した頃の機種だと思われる)、長い間、ご苦労さん!キミのことは忘れんけんの。
 10時25分。ETV[知るを楽しむ・私のこだわり人物伝]「特撮の神様・円谷英二」の二回目を見る。唐沢氏、前回よりやせて見えた。11時半就寝。断酒。