須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

日本雑煮党

 7時半起床。力うどん、トースト二枚、ナットウ、冷水、麦茶、カフェオレ、チョコ二粒。

 8時35分<Maxvalu>前で萌黄さんのクルマに拾ってもらう。車中、<日本の古本屋>などへUPDOWNするための、また自家目録用の材料を即出し入れ可能にするための、エクセルでの在庫管理の仕方を聞く。自分の知識では八割方理解できなかったが、現在須雅屋で採用している、というか成り行きに任せている杜撰な方法では点数が二千、三千と増えて来るに従って齟齬を来すということだけは分かった。何事も厄介なものだ、生きるということは。9時10分交換会会場頓宮神社着。
 先月分の支払い5240円を済ます。すでに事業部員は揃っていたが、例によって荷物少なく、手持ち無沙汰。しばしお茶を飲んで談笑時間。K堂さんが大ダンボール八箱ほど出品、次いで旭川のRさん、それから滝川のBさんが遠路はるばる持ち込んだ荷でセリらしき恰好がついた。

 今日は何も買わない積もりであったが、第二回開札の机上に昭和四十年代前半の『中二コース』(筒井、眉村、光瀬などの連載あり)が二十冊ほどと付録文庫判ミステリ約五十冊一括の口があり、付録の方は三分の一ぐらい背に痛みがあって状態は良くないが、札幌の市場でこれだけまとめて出るのは珍しい。紐を解いて中身をぱあっーと点検してまた結わえ直し、よし買おうと決断して荷から離れる。この本がどうしても欲しい光線を放射しつつ、執着心あらわに、いつまでもお目当ての荷の前にいるというやり方は好まないし、できるだけやらない。むしろ無関心を装う。執着を示せば入札価格の高騰を招くだけだからである。

 11時第一回開札、発生を担当。壁際の床に積んであった文芸評論の山と吉本隆明の山がバカ安。市場でこの値段ではお客さんから買えない。出品者に同情してしまうし、売り買い共に長年一番の功労者であるだけに、次からは市場への出品はヤメにするのではと不安になる。

 付録の口、人気あり、じっくり見る人何人かあり、札が何枚も入って封筒が膨らんでいる。強めの札を入れてくると思われるSさん、それに親子で来場しているHさんが見終わって入札した後、第二回開札数分前というところで再び標的に近づく。それなりに計算をして、まず上札では落ちるだろうとそれなりに予測した数字を記入した札を入れる。11時第二回開札。萌黄さんが開札するのを横で眺める。Rさんの札に脅威を感じ、Sさんのおとなしい札を見て、お、やはりワシに落ちたな、といい気分でいたのも束の間、泡沫の夢であった。Hさんのぶっちぎりの数字に驚かされる。下札で持って行かれる。今日の自分の如くに、上札で落札しようなどという虫のいい考えでは、人気の品は入手できないのである。ここまで完膚無きまでやられると気持がいいくらいなのである。が、「いやあ。お金使わなくてよかったなあ」と萌黄さんに負け犬の遠吠えをしてみせるところが我ながら情けない。やはり古書業界、景気が戻りつつあるんだね、ワタシを取り残して。

 正午終了。1時前会場を出、I丸書店のワゴン車にD學堂さんと共に同乗。狸小路のH書房さんに所用を果たすべく伺うが不在。店を開けるD學堂さんとお別れし、近くの中古レコード店<フレッシュ・エアー>へ寄る。何も買わず、10分ほどで店を出る。十年ぶりくらいに<D學堂>も見学させてもらおうと引き返すが、あら不思議、さきほどガラガラ開けられたシャッターが降ろされている。んなら帰るべか、と思ったが、『札幌人』で確かめておきたいところがあったので大通まで歩いて<リーブルなにわ>へ。『文藝春秋』と『札幌人』冬季号を立ち読み。地下鉄で南平岸へ戻り、平岸六条郵便局で振替口座から4580円、「ぱるる」から790円、振替妻口座から8050円をおろし、<セイコーマート>でNTT3863円払い込み、『週刊新潮』『週刊文春』立ち読みし、低脂肪乳128円買って3時一旦家へ戻り、すぐ外出。灯油12リットル八八八円(末広がりだぞ灯油!縁起いいぞ灯油!偉大だぞ灯油!「小笠原劇場」のマネだぞ灯油!)を調達し本格的に帰宅。GSの待合室に先日あったポケット・ティッシュが今日は一ヶもなかったのがちと残念なり。さては自分が向かってくるのを察知したGSの職員諸君たちが急いで片付けたのであろうか。

 今日は日中気温が上がり3月下旬並となった由。朝はまだ固い路面が溶け出した頃で滑りやすく何度か転びそうになり、昼にはあちらこちらで水たまりができるほど暖かくなって手袋を嵌めなくても平気なぐらいであったが、夕方になって急に冷え込んで来た。まだまだ春には遠いのである。
 <楽天>から受注二件。マッキヴァーンHPB「明日に賭ける」、洋書「ノーマンロックウェル画集」。作日の「サイパン」の入金あり、梱包して郵便局に電話するが待てど暮らせど集荷来ず、仮眠の時間を逃す。ようやく8時半に発送終えた後、雑煮味噌仕立て、麦茶、チョコ二粒、紅茶で第二食。シャワー浴び、湯たんぽ入れて寝ながらオリンピック観戦。11時過ぎ就寝。断酒。