須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

ゆりかごからヌルハチへそして狸へ

 1時半起床。12時現在曇り、5・4℃、−m/s(風力ゼロということか)、湿度61%、日中最高気温10℃。久しぶりにインコに昼の光を当てる。

 『ユリイカ』特集:バウハウスを探して梱包。2時半、先日のヴァーガス・ファンの人から電話。20分ほど質問に答える。どれが一番のオススメかをリスト作成者の妻に直接訊きたいので、後ほどまた電話くれる由。

 3時、今朝録音した夫馬さんのテープ聞きながら、牛乳、即席麺、トースト、アンパン、カフェ・オ・レ、紅茶にて第一食。メールチェック。珍しく室蘭栄高同級生の数少ない友人渡辺から受信あり。近年、北海道栄という高校が出来て野球で名前がよく上がるのだが、そちらの生徒さんに責任はないが実にまぎらわしい思いをしているのである。それはまあともかく、同じく数少ない今一人の同級生友人で洞爺湖温泉在住の川南が来札中なので飲まないか、とのお誘い。ススキノ<I書店>にて5時待ち合せとのこと。金がなく、またいつものごとく負担をかけるのも悪いので断りメール出す。それから某書店へ用あり電話。無駄話で某某さんの◎◎◎について聞く。自分が推測していた◯◯より◯◯◯がいいので、ちょっと驚く。

 5時頃ヴァーガスさんから電話。今度は妻が応対。結局もう少し検討されることに。

 6時から在庫データ入力始めたところに、<楽天>マイブースの質問コーナーに妙な問い合わせあり。須雅屋が出品している本で、某叢書モノのうち林房雄著の一冊があるのだが、その本とは別の同叢書の川端康成の本はいくらぐらいするのでしょうか?というもの。どう答えていいか悩んでいるところへ15分後に同じ人からまた質問あり。その川端本は買う時は2万9千9百円で、でもこれが売ったらなんと50円なのです、と記されている。何を求められているのか、なおのこと自分は困り、「勉強不足で相場よく分かりませんし、資金不足で当店では買うこともできません。すみませんが、おゆるし下さいませ」とほぼ真実を答えておいた。と、さらに三つ目の質問(?)が来て、実はその川端本をA古書店から2万5千円で、B古書店から2万9千9百円で買ったのだが(どちらも<楽天>サイトへの出品店ではない)、2万5千円の方をある店に売ったところ50円で買われ、それで正当な相場が分からなくなってしまったのだ、と付け足してきた。一応<楽天>画面には、「質問欄の問い合わせには必ず答えてください」とあるのだが、内容が須雅屋の出品商品への質問ではなく、また他店の売値や買値に関してはコメントできないし(酒席や茶飲み話ではしょっちゅうやっているのだが)、それに答えを送るといつまでも質問コーナーにメールを送付してきそうなので、今日のところは放置しておくことにする。

 8時過ぎ、川南から電話あり。現在ススキノ、これから鶴見さんの店に行くから出てこれないかというお誘い。逡巡の末、意志が弱い自分は合流することとなった。ああ。と、嘆いてみせながら、心の奥底ではきっと、この更なる誘惑の電話を待っていたにちがいない自分なのだ。直後、<楽天>から受注二件。ポー原文/ボードレール仏訳に注釈者の和訳も付いた「黒猫 ウィリアム・ウィルソン」と池田得太郎「家畜小屋」。受注確認メールを出して9時近く外出。
 節約のためできるだけ徒歩で距離を稼ぎ、地下鉄南平岸駅過ぎて<尾州寿司>近くでタクシーに乗り、豊平川渡って直進、石山通りとの交差点にある<ヌルハチ>へ到着。乗車料金680円で済む。この店には正月以来。渡辺、川南とは昨年の今頃この店で飲んでからちょうど一年ぶり。店主の鶴見さんも数少ない友人の一人で自分が独立開店する前からのおつき合い。最初、これも数少ない友人の野口に連れられて来た二十数年前は<猫のゆりかご>という屋号であったのだが、その後<Halfsugar>となり、しばらくご無沙汰しているうちにアジアン・バー<ヌルハチ>に変貌していた。何故マルハチではなくヌルハチなのかはまだ聞いていない。

 二人すでにいい調子になっており、懐旧談に花が咲くということもなく、カウンターの女性に勧められるままにいきなりカラオケ。ビール1杯、日本酒(増毛町国稀酒造>鬼殺し)4、5杯を飲み、自分も十数曲。近くのボックス席にいた30代と思しき女性三人組のうち一人、特に度し難く自己中心的に酩酊しているのがいて、たびたび襲撃を受け逃げ回る。いつのまにやら川南が消えた後も1時半頃閉店まで乱れ騒ぐ。渡辺はそこで帰り、自分は<ヌルハチ>からそう遠くない界隈のナントカ会館の二階にある老夫婦二人でやっている<狸>なる店でジンギスカンを御馳走になる。建物自体も古いが、天井、壁紙、床やテーブルが煤けていい色合いになっている実に伝統のありそうな店で、今夜は他に客もなく、繁華街からも遠い場所で、この深夜に営業しているのが不思議。きっと根強いファンがいるのだろう。鶴見さんに送られて2時半頃帰宅。皆さんのお気遣いで出費は最初のタクシー賃680円のみで済んだ。川南が忘れていった本を与る。

 4時10分から昨日の続きの夫馬基彦「私の遊行期と家住期」第2回を聞き、録音。が、またスピーカーの接触が悪くなり音声がほとんど聞こえない。本棚の上にあるラジカセのボリュームをいじると、ところどころ音が大きくなるが、またすぐ蚊の鳴くような声になり往生する。仕方がないので今日は聞けずとも明日テープを再生すればちゃんと聞けるだろうと考え、崩れ落ちた本の中、立ったままボリュームの部分を押さえ続けて、ひそひそと交わされる対話を録音。冷ややかな妻の視線を感じつつ。5時過ぎ就寝。