須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

そして窓を開ける

 1時半電話で起こされる。プーシキン全集在庫問い合わせ。ございません。また寝る。2時半『札幌人』から電話。明日3時来訪。また寝る。4時ぐらいから真上の部屋のガキがうるさくて眠れず、5時に起きる。

 ママの友人が子連れで遊びに来ているのか、ガキ同士で走り合い、今日は殊の外天井に響き、わが脳髄に響く。過ぐる8月9日、我慢に我慢を重ねたが我慢できずに、とうとう苦情を伝えに行くと、「わかりました」と奇麗な若奥様(なんか宇野鴻一郎みたいで、奥さん、どうもすみません)がシオらしくお答えになられたので、とりあえずの解決への手応えと鬱積していたモノを吐き出した解放感に、よかった、よかった、話せば分かるんだよ、話せば、世の中まだ常識も人情も死んじゃいないんだ、明日と愛を信じようじゃないか、スガ君!と世界への肯定感いっぱいに、階段を踊るようにして下りてきたのであるが、それから半月余りでこのザマである。いったい若奥様は何を分かって下さったのであろうか。床掃除に使うコロコロ・ローラーの柄の尖端で天井をゴンゴンどついたろか、という衝動が頭を擡げたが、もしや2Fのダンナは堅気の方ではないかもしれぬという妄想と(多いんです、この界隈豊平区)、「下の人がヘンにウルサいんです」などと大家に相談を持ち込まれると、元々が大家に可能な限り会いたくない立場の自分は尚更苦しい局面に追い込まれる、という分別が働き、まっ、今日んところは勘弁しといたるわい、と天井に向かって一言吐き捨てるだけに留めたのである。でも、騒がしい。うるさいったらウルサイ。天気の悪い日は静かに本でも読んで聞かせやがれ!結局4時から6時まで拷問は続いた。この時間に寝てるとは思わないでしょうからね、普通、と妻が云う。しかし、寝ていようが起きていようが迷惑千万は迷惑千万なり。

 3時現在、くもり、19・6℃、湿度76%、南南東の風7m/s。

 メールチェック、ドタドタと走り廻る2階のお子様達の健やかな成長ぶりを呪いながら即席麺で第一食。6時のニュース。台風は結局来ず、札幌にはもう影響はないとのことで安堵する。道内の牧場で住込みの若者が、テレビを見ていた同室の先輩の後頭部を、いきなりスコップの柄の端で殴打し重傷を負わせた由。常日頃、被害者が加害者に対してとるバカにした態度が気に入らなかった、というのが動機であるそうな。今年になって同じく道内の牧場で、住込みの若い女性従業員が雇主の奥さんを殺害するという事件もあった筈で、こうしてみると牧場という文字通りイメージとしては牧歌的に思える場所には、その実、憎悪と殺意が渦巻いているものらしいのだ。

 9時15分、ラジオでテレビを聞く。NHK金曜時代劇「秘太刀馬の骨」第一回。途中まで聞いて、ネットでTV番組表見たら、原作は果たして藤沢周平であった。やはり一人の人間の想像力には限界があるのか、それとも大衆文学の人気作家には同じストーリーのパターンが求められるが故か、二人の実力ある家老にそれぞれ派閥があるとか、その家老同士の権力奪取のための陰謀の応酬とか、剣法の師匠から受け継いだ秘剣の謎とか、主人公が飲み屋の女将にモテるとか、「用心棒日月抄」「蝉しぐれ」「三屋清左衛門残日録」などと設定が似ているので、藤沢文学に明るくない自分でも藤沢さんかな、と思ったわけだ。でも、見てえなあ。ちゃんとしたテレビで。時代劇は日本男児の愉しみ、魂のふるさと。でもないか。

 11時過ぎ、少し蒸して来た感あり、台風は去りし由なので、窓を開ける。二つ開けるのに20分を費やす。
  <楽天>から注文二件。島崎藤村井上洋介の絵本「えのきのみ」、安水稔和詩集「愛について」。おお!現代詩が売れたじゃないの。

 12時、第二食。NHK・FMで渋谷陽一の番組を聞いていると、stonesのニュー・アルバムがまもなく出る由。励まされますよ、これは。聞きてえなあ、ちゃんとした音響装置で。

 4点入力してシャワー、大急ぎで済ませようと決意して臨んだのであるが、風呂から出ると1時間経っており3時半。明日の撮影のために念入りに髭を剃ったのがよくなかったか。ヒゲをあたると途端に入浴のペースがスローになる癖があるようだ。
 入浴後、8点入力、計12点楽天へUP。日記書き。10時就寝。断酒。