須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

S大訪問記と或る追悼集

 11時起床。晴。最高気温28℃。肌寒き早春から一飛びに真夏になったかのようである。暑さは苦手であるが、冷害になり米価が一昨年のように高騰してはビンボー人にとっては死活問題なので、よしとしよう。

 メール確認、ブログ覗きをしつつ、うどん、カフェ.オレ、紅茶、水を摂取。

 予定より20分遅れて12時半前、家を出る。徒歩で行こうと考えていたが、配達品がけっこう持ち重りするのでバスでS大学へ。6、7分で到着。一緒に降りた、狸小路やススキノあたりで見かける腹部背中ミエマルに肌を晒した若い女性が、正門から大学構内へずんずん入ってゆくのでたじろぐ。これが大学生なのかな、と訝りつつその後をついて中庭を歩いてゆくと、男子学生らとほぼ等分の数の女子学生がそちらこちらに、胸元を見せ、臍を見せ、尻を見せして闊歩している。あるい立ちを話している。またGパンからパンツをはみ出させて芝生に胡座をかいている者もいる。現代の女子学生は皆こうなのか、この大学だけなのかは事情に暗く分からぬが、それにしてもなんという開放的なキャンパス風景であろう。スカート派は数えるほどしかいないのは、ちと残念であるが、花咲く乙女たちではなく、肌さらす女子大生たちの半裸の群をしばし眺めていると、あちこちから不審の視線が向けられ、無言の声が聞こえる。何浪かしらあの人、それともレゲエのおじさん?用事を思い出し、あたふたと中央棟へ入り、エレベーターで5階へ。

 1時5分、H先生研究室着。無事、『假面』復刻版をお納めし、代金5万5千円を戴く(と、いっても元の定価13万だからね)。昨日注文をもらってから今日家を出るまで、いや、金を我が手に握るまで、キャンセルされるのではないかと内心びくびくしていたので、実に安心する。15分ほど雑談。石神井さんのカタログ最新号から買った本を見せて戴き、「薄野カウンター物語」という本を1冊もらう。お知り合いの追悼集の由。装丁は自分も知っている須田照生さん、寄稿者に藤堂志津子東直己、小檜山博など著名な札幌在住作家もいる。古本愛好者に追悼集コレクターもいるから、これは売れるだろう。ありがたい。

 商売の後は第一学生食堂とその真上の生協を見学。学食は他にもう一つ、さらにモダーンでおしゃれなカフェテリア風のがあるらしいが、ここでも充分に立派だし、きれいなもんである。札幌で流行りのスープカレーが定食で450円。ぱっと見たところラーメン類の280円が最も安価な一品のようで、自分的には少しばかり高く感じる。メニューも今風でこってりしたものが多く、学生には受けがいいのかもしれないが、自分が東京にいた頃の、ここへ来ればとにかく命はつなげられるという最低価格の救護食堂のような感じはまったくなく、これではビンボー人にはつらい。大学目の前に<吉野屋>でもできたら、利用者は半減するのではないか、などと思いつつ自分は冷たい水のみを戴く。

 生協書籍売り場。村上春樹、龍(何故か「半島」の上巻のみ)、片山恭一恩田陸、「電車男」など若い人向けの本がちょこっと並ぶが文芸書は品薄、ボリューム感なし、というよりもかなり貧弱。田口ランディブログ連載感想集「世界に抱かれるために」、中島らもの新宿<ロフト・ワン>でのトーク集を手にとり捲くってみる。20分ほどいたが、学生たちが見ていたのは、就職情報、資格取得の本と、週刊誌、マンガのみ。教科書の置き場にあるスタンドの注意書きを見ると「試験終了後の教科書の返品には応じられません」と表示されており、笑い出しそうになる。これを過去にやった豪の者というか、セコイというか、ズルイ輩が一人や二人ではないのだろう。職員さんも大変である。

 3時、バスで自宅近辺へ戻り、徒歩で地下鉄駅界隈へ。JAで家賃4月分残37.517円を振込み、<Maxvalu>でブラックニッカ・クリアブレンド、とうふ、チーズ、即席ラーメンを購う。帰る途中、自宅MS間近で、豪邸の玄関へ入ろうとする大家を見かけ、思わず目をそらし、足を早め、MS内へ駆け込む。どっと汗。入れ替わりに妻は岩内へ出発。

 夕方のローカルニュース。20年前の札幌市内の喫茶店数、2400軒、昨年2004年には千軒をきった由。

 10時過ぎ、<ラクテン>へ「カミングス詩集」注文あり。

 シャワー後、久方ぶりのウィスキー水割り飲みながら、「薄野カウンター物語」を流し読み。数年前に、ススキノにある飲み屋さんのカウンターで53歳で亡くなったI・Sさんの追悼文集。飲食店専門の店舗設計で知られていた方で、手がけた店はススキノだけで千件以上あるという。その飲み屋さんでの仲間が綴ったI・Sさんの思い出を読む。

 ただ、この本、読まなくても、内容の特徴が二つ、最も出ている場所があって、それが執筆者紹介の欄。元◎◎銀行東京支店長とか、△▲社代表取締役とか、◯◯大学教授とか、□■病院院長、著書は百冊以上とか、やたら仰々しい社会的地位の説明が必要以上に多いところ。この人たちは相手や自分の肩書きを気にしながら酒を飲んでいたのか。また、この店は肩書を通して客を見る飲み屋なのか。それとも、酒の席でも、死んだ酒友を送る文章でも、肩書きから逃れられないのが人の世の常なのか。

 もう一つは、その肩書きに画家、音楽家、中でも作家がやたらに多いこと。先ほど上げた藤堂さんたち著名作家さん以外に作家が十人以上もいる。しかもその誰もが(一人を除いて)、一応文学書を主とする古本屋をやってきた自分の聞いたこともない名前ばかりなのである。

 日ハム3×ロッテ1。巨人4×横浜11。ベイ、対巨人戦5連勝。MLB、松井8号3ラン。

 3時就寝。