須雅屋の古本暗黒世界

札幌の古書須雅屋と申します。これは最底辺に淀んでいる或る古本屋が浮遊しつつ流されてゆくモノトーンな日々の記録でございます。

水曜 武部礼代『句抄 花恋』、澤田珈琲

 午前8時半起床。うどん、ナットウ、冷水。

 9時25分出。小雨。傘さしながら小走りで駅前へ。9時34分、待ち合せ時間より4分遅れて南平岸Maxvalu>向いへ。◯◯さんすでに来ておりクルマに同乗す。◎◎さんも一緒。意外に道が混む。△△△駅で◇◇さん拾う。10時ちょい過ぎT宅着。ええ感じの家。ご主人に挨拶。2階に上がって本を見る。今日は◇◇さんの付き添い兼見学者のつもりで来たのであり、文学関係は特段期待していたわけではないのだが、あっ!と声の出る物が数冊あった。あ〜あ、オレったら正直者、だからボンビー。ってこともないのであるが、やはり何処にどんな本が眠っているか分からんもんであるなあ、との感深くする(帰宅してから北海道文学事典で調べると在るべき所に在ったのが分る)。

 個人的に嬉しく、今回本を見させていただく縁を感じたのは武部礼代『句抄 花恋』という可愛らしい冊子。約127頁。金崎葭杖、中川利若、辰木久門、園田夢蒼花、新妻博、齋藤玄、手塚甫、新明紫明、鈴木白歩、管原虚洞子の10氏が追悼を寄せている。見覚えのある背表紙だと思わず手が伸びたのだけれど、この本、わが妻の父方の伯母(お父さんの姉)の遺稿句集なり。旦那さんが若くして亡くなった妻を惜しんで製作(昭和52年)、知友に配ったもの。「これ、ウチのカアチャンの伯母さんの句集なんですよ、カアチャンがちょっと似てるんですが」と◯◯さん◎◎さんに示すと、中に入っている写真を見て「奥さん**なんだね」と云われる。家の何処かに1冊ある筈だが、持ち帰っていいと勧められるので有り難く頂く。(帰宅後、妻から聞いたところでは表紙に使われている模様は遺品の着物の柄を写したものである由。)

 以下、北海道文学大事典から引用する。「武部礼代(たけべれよ) 昭2・3・4〜昭51・12・24(1927〜1976)[俳句] 後志管内岩内町生れ。昭和40年札幌市成人学校俳句教室で寺田京子の教えを受けたのち水声会に加入し、44年水声第一回新人賞を受ける。直腸ガンで早世し、49年(これは52年の誤り。須賀)遺句集『花恋』が上梓された。(園田夢蒼花)」

 正午前、調査終了、T宅を辞す。車中、「古本屋さんがやめたり、亡くなったりしたら、やっぱりそのお店の本もセリに出されるの?」と◎◎さんから訊かれ、「ん、そうです、セリ場に持ち込まれたり、直接その店でセリになったりですけど、ま、たいてい悲惨な末路ですがね」と過去の見聞から例を挙げて「冷酷なもんですよ〜」と説明する。久しぶりだから何処ぞでもう少し語りませんか、との自分のリクエストに応えていただき、大型店Pに駐車しリブロ平岸さんご近所の<喫茶開化>へ赴くが休業日なのかドアが開かず、平岸をぷらぷら歩いた後、またクルマに乗り<澤田珈琲>へ。ええ感じの店。アイスコーヒーご馳走になる。1時間半ほど出版関係とかの雑談。送られて、2時半帰宅。12時現在、曇り、19・0℃、湿度83%。

 メールいろいろ。受注、齋藤玄句集『雁道』、木下順二文庫『夕鶴・彦市ばなし』。梱包1。昨日、拉致が報道されていたアフガニスタンNGOペシャワール会伊藤さん死亡が確認された。

 9時過ぎ、トースト2、ミニあんパン1、牛乳、紅茶。11時FMで「サマー・ロック・トークセッション」。坂本龍一渋谷陽一。夜になってずいぶんと蒸す。11時半、シラスおろし、ブリ、マグロ刺身、カツオたたき、冷奴、キャベツ・シソ浅漬け燗酒二合、玄米茶。「人といて雹が激しく匂いたつ」「海見んと冬髪吊られる坂の町」「一枚のシーツとなって石女ねむる」「夜が重くて眠るほかなし黒ぶどう」(いずれも武部礼代作)。午前2時就寝。